母子家庭の手当所得制限を完全解説【2025年最新版】

児童手当の文字と親子を表すミニチュア人形のイメージ

母子家庭のお母さんにとって、児童扶養手当は生活を支える大切な収入源ですよね。でも「所得制限があるって聞いたけど、私の収入だと手当はもらえるの?」と不安に感じていませんか。実は、所得制限の仕組みを正しく理解すれば、手当を最大限活用できる方法が見えてきます。この記事では、令和6年11月の改定内容も含めて、母子家庭の手当所得制限について分かりやすく解説していきます。

この記事でわかること
  • 所得制限の最新改定内容(令和6年11月対応)
  • 支給対象になる年収・所得の目安
  • 養育費や同居家族の影響
  • 手当を最大限受け取るための節税法
  • 申請手続きと必要書類の完全ガイド
目次

児童扶養手当の所得制限限度額一覧表【令和6年11月改定対応】

児童扶養手当には所得制限があり、前年の所得によって「全部支給」「一部支給」「支給停止」のいずれかに決まります。令和6年11月から所得制限限度額が引き上げられ、より多くの母子家庭が手当を受給できるようになりました。お母さんの所得だけでなく、同居している扶養義務者(おじいちゃん・おばあちゃんなど)の所得も影響するので、しっかりと確認しておきましょう。

扶養親族数別の所得制限額(全部支給・一部支給)

児童扶養手当の所得制限は、扶養している親族の人数によって変わってきます。扶養親族とは、お母さんと生計を共にしている年間所得が38万円以下の親族のことですね。お子さんはもちろん、同居しているおじいちゃんやおばあちゃんも扶養親族に含まれる場合があります。令和6年11月からの改定で、全部支給の所得制限が大幅に引き上げられ、これまで一部支給だった方も全部支給を受けられる可能性が高くなりました。

扶養親族0人~5人の所得制限表

具体的な所得制限額を表で確認してみましょう。この表の金額は「所得」であって「年収」ではないことに注意が必要です。年収から給与所得控除などを差し引いた後の金額が所得になります。例えば、扶養親族が1人(お子さん1人)の場合、全部支給を受けるには所得が107万円以下である必要があります。これは年収に換算すると約190万円程度になります。一部支給については246万円(年収約385万円相当)まで受給可能です。

扶養親族数全部支給所得制限一部支給所得制限年収目安(全部支給)
0人69万円208万円142万円
1人107万円246万円190万円
2人145万円284万円244万円
3人183万円322万円299万円
4人221万円360万円354万円
5人259万円398万円409万円

令和6年11月からの改定内容

令和6年11月から児童扶養手当の所得制限が大幅に見直されました。全部支給の所得制限額が約20万円引き上げられ、これまで一部支給だった多くのお母さんが全部支給を受けられるようになったんです。この改定により、子ども1人の母子家庭の場合、年収約190万円まで満額の45,500円を受給できるようになりました。既に手当を受給している方は自動的に見直されますが、これまで所得制限で受給できなかった方は新たに申請することで手当を受けられる可能性があります。

扶養義務者・配偶者の所得制限

児童扶養手当では、お母さん本人の所得だけでなく、同居している扶養義務者の所得も審査対象になります。扶養義務者とは、お母さんの直系血族(父母・祖父母)や兄弟姉妹のことで、同じ住所に住んでいる場合はその人の所得も確認されるんです。扶養義務者の所得制限は、お母さんより高く設定されていますが、高収入の親族と同居している場合は手当が支給停止になることもあります。扶養義務者の所得制限額は扶養親族数に関係なく、一律で設定されています。

扶養親族数扶養義務者所得制限年収目安備考
0人236万円約400万円
1人274万円約450万円
2人312万円約500万円
3人350万円約550万円
4人388万円約600万円
5人426万円約650万円

あなたの年収で手当はいくらもらえる?所得制限の計算方法

「私の年収だと、児童扶養手当はいくらもらえるのかしら?」と気になりますよね。手当の支給額を正確に知るためには、年収から所得を計算する必要があります。多くの方が「年収=所得」だと思っていますが、実際は違うんです。年収から給与所得控除や各種控除を差し引いた金額が所得になります。ここでは、具体的な計算方法と、養育費の取り扱いについて詳しく説明していきますね。

年収から所得への正しい計算手順

所得の計算は少し複雑に感じるかもしれませんが、順序立てて考えれば難しくありません。まず、年収から給与所得控除額を差し引きます。その後、10万円の基礎控除と8万円の社会保険料相当額控除を差し引きます。さらに、ひとり親控除35万円も適用されるので、これらを全て差し引いた金額が所得になります。養育費を受け取っている場合は、その8割を所得に加算する必要があることも覚えておきましょう。

給与収入の場合の計算例

パートや正社員として働いているお母さんの場合を例に計算してみましょう。年収200万円の場合、まず給与所得控除額68万円を差し引くと132万円になります。そこから基礎控除10万円、社会保険料相当額控除8万円、ひとり親控除35万円を差し引くと79万円が所得になります。この所得79万円は、扶養親族1人の全部支給所得制限107万円以下なので、満額の45,500円を受給できることになります。年収が上がっても、控除をうまく活用すれば手当を受け続けることが可能です。

STEP
年収から給与所得控除を差し引く

年収200万円の場合:200万円 – 68万円(給与所得控除)= 132万円

STEP
各種控除を差し引く

132万円 – 10万円(基礎控除)- 8万円(社会保険料相当額)- 35万円(ひとり親控除)= 79万円

STEP
養育費の8割を加算(該当者のみ)

養育費月3万円(年36万円)の場合:79万円 + 28.8万円 = 107.8万円

自営業収入の場合の計算例

自営業やフリーランスとして働いているお母さんの場合、所得の計算方法が少し異なります。確定申告書の「所得金額の合計」がベースになり、そこから基礎控除10万円と社会保険料相当額控除8万円、ひとり親控除35万円を差し引きます。例えば、事業所得が150万円の場合、150万円から53万円の控除を差し引いて97万円が所得になります。自営業の場合は経費を適切に計上することで所得を抑えることができるので、税理士さんに相談してみるのも良いでしょう。

養育費は所得に含まれる?計算時の注意点

「元夫から養育費をもらっているけど、これも所得に含まれるの?」という質問をよく受けます。はい、養育費は所得計算に含まれますが、全額ではありません。養育費の8割が所得として加算されることになっています。これは、養育費には税金がかからないことを考慮した措置です。養育費を受け取っている場合は、必ず申告する必要があり、隠していると後で手当の返還を求められることもあるので注意が必要です。

養育費の8割算入ルール

養育費の8割算入ルールについて詳しく説明しますね。例えば、毎月3万円の養育費を受け取っている場合、年額36万円の8割である28万8千円が所得に加算されます。これは、養育費が子どもの生活費として使われることを考慮した措置です。養育費の金額は、離婚協議書や調停調書に記載された金額だけでなく、実際に受け取った金額も対象になります。一時的に養育費が止まった場合でも、取り決めがある限りは申告が必要になることがあるので、市役所に相談してみましょう。

養育費算入の注意点
  • 養育費の8割が所得に加算される
  • 一時的な支払いも含まれる
  • 隠していると手当返還の可能性
  • 取り決めがあれば未払いでも申告が必要な場合がある

養育費を含めた所得計算の具体例

具体的な例で養育費を含めた所得計算をしてみましょう。年収180万円で、毎月3万円の養育費を受け取っているケースを考えてみます。まず年収180万円から給与所得控除額を差し引くと124万円になります。そこから各種控除53万円を差し引くと71万円になります。ここに養育費年額36万円の8割である28万8千円を加算すると、所得は99万8千円になります。この場合、扶養親族1人の全部支給所得制限107万円以下なので、満額受給が可能です。

所得制限ギリギラインの収入調整テクニック

「あと少し収入を抑えれば、手当を満額もらえるのに…」と感じているお母さんも多いのではないでしょうか。実は、働き方や控除の活用によって、手当を最大限受給しながら効率的に収入を得る方法があります。無理に収入を抑える必要はありませんが、所得制限のボーダーライン付近にいる場合は、少し工夫するだけで手取り収入を増やすことができる場合があります。ここでは、合法的で実践的な収入調整のテクニックをご紹介しますね。

手当を満額受給するための年収目安

手当を満額受給するための年収目安を知っておくことで、働き方の計画を立てやすくなります。扶養親族1人(お子さん1人)の場合、年収約190万円まで満額受給が可能です。これは月収に換算すると約15万8千円程度になります。パートタイムで働いている場合、時給1000円なら月158時間、週約40時間の勤務で達成できる金額です。フルタイムで働きたい場合は、時給を下げるのではなく、控除を活用して所得を抑える方法を考えてみましょう。

子ども1人の場合の年収ボーダーライン

子ども1人の母子家庭の場合、全部支給を受けるための年収ボーダーラインは約190万円です。これを超えると一部支給になりますが、年収385万円まで手当を受給できます。年収190万円から220万円の間は、収入が増えても手当の減額により手取りがあまり増えない「働き損ゾーン」になることがあります。この場合は、思い切って年収を上げるか、控除を活用して所得を抑えるかを検討しましょう。年収250万円を超えると、手当の減額分を考慮しても総収入は増える傾向にあります。

年収190万円を少し超えちゃうと、手当が減って結局手取りが変わらないってことがあるのね

そうなんです。でも控除をうまく使えば、年収200万円でも満額受給できる場合がありますよ

子ども2人以上の場合の年収目安

子ども2人の場合、扶養親族数は2人になるので、全部支給の年収ボーダーラインは約244万円まで上がります。子ども3人なら約299万円まで満額受給が可能です。子どもの人数が増えるほど所得制限が緩くなるので、しっかりと働いても手当を受給しやすくなります。子ども2人の場合、月収約20万円まで満額受給できるので、正社員として働いても手当を受け続けることができる場合が多いでしょう。扶養親族の数え方には注意が必要で、高校生や大学生のお子さんも扶養親族に含まれます。

所得を下げる節税対策と控除活用法

所得制限をクリアするための合法的な節税対策について説明しますね。最も効果的なのは各種控除の活用です。ひとり親控除35万円は自動的に適用されますが、その他にも医療費控除、生命保険料控除、小規模企業共済等掛金控除などがあります。これらの控除を適切に活用することで、年収を変えずに所得を下げることができます。特に医療費控除は、お子さんの医療費も含めて10万円を超えた分が控除対象になるので、意外と活用できる場合が多いんです。

ひとり親控除35万円の活用

ひとり親控除は、母子家庭のお母さんにとって最も重要な控除の一つです。35万円という大きな控除額があるので、これを忘れずに適用することで大幅に所得を下げることができます。ひとり親控除の適用条件は、合計所得金額が500万円以下であること、事実上の配偶者がいないこと、生計を一にする子がいることです。離婚や死別、未婚のいずれの場合でも適用されます。年末調整や確定申告の際に、必ず「ひとり親」の欄にチェックを入れることを忘れないでくださいね。

活用できる主な控除
  • ひとり親控除:35万円
  • 医療費控除:10万円超過分
  • 生命保険料控除:最大12万円
  • 小規模企業共済等掛金控除:全額
  • 障害者控除:27万円(該当者のみ)

その他使える控除一覧

ひとり親控除以外にも活用できる控除がたくさんあります。医療費控除は年間10万円を超えた医療費が対象で、お子さんの歯科矯正や通院費も含まれます。生命保険料控除は年間8万円まで控除対象になり、学資保険も該当します。小規模企業共済等掛金控除では、iDeCoやフリーランス向けの小規模企業共済の掛金が全額控除されます。扶養親族に70歳以上の方がいる場合は老人扶養親族として10万円の加算もあります。これらの控除を組み合わせることで、大幅な所得削減が可能になります。

所得制限を超えた場合の対処法と代替支援

「収入が増えて児童扶養手当がもらえなくなってしまった…」というお母さんも落ち込む必要はありません。児童扶養手当以外にも母子家庭を支援する制度はたくさんあります。収入が増えることは基本的に良いことですし、手当に頼らない生活を目指すのは素晴らしいことです。ここでは、児童扶養手当の対象外になった場合でも利用できる支援制度や、将来的に手当を再び受給するための方法について詳しく説明していきますね。

児童扶養手当がもらえない場合の他の手当

児童扶養手当の所得制限を超えても、他の手当や支援制度は利用できる可能性があります。まず児童手当は、母子家庭に限らず全ての家庭が対象で、所得制限も児童扶養手当より高く設定されています。自治体独自の母子家庭支援制度も多数あり、住宅手当や医療費助成、就学援助などは所得制限が異なる場合があります。収入が増えたからといって全ての支援がなくなるわけではないので、お住まいの自治体に相談してみることをお勧めします。

児童手当の所得制限との違い

児童手当の所得制限は児童扶養手当よりもかなり高く設定されています。扶養親族1人の場合、児童手当は所得668万円(年収約876万円)まで受給可能で、それを超えても所得960万円(年収約1200万円)までは特例給付として月5000円が支給されます。児童扶養手当の対象外になっても、児童手当は受給し続けられる場合がほとんどです。児童手当は0歳から中学校卒業まで支給され、月額10,000円から15,000円となっています。申請は住所地の市区町村で行い、毎年6月に現況届の提出が必要です。

年齢児童手当支給額所得制限特例給付
0-3歳未満15,000円668万円5,000円
3歳-小学校卒業10,000円(第3子以降15,000円)668万円5,000円
中学生10,000円668万円5,000円
高校生以上対象外

自治体独自の母子家庭支援制度

各自治体では独自の母子家庭支援制度を設けている場合があります。東京都では児童育成手当(月額13,500円)という制度があり、児童扶養手当とは別の所得制限で支給されます。大阪市では母子家庭等医療費助成制度の所得制限が児童扶養手当と異なる場合があります。横浜市では母子家庭等自立支援教育訓練給付金事業を実施しており、職業訓練受講料の一部を助成しています。お住まいの自治体のホームページを確認するか、子育て支援課に直接問い合わせてみると、利用できる制度が見つかるかもしれません。

所得制限復活のための収入調整方法

一度所得制限を超えても、翌年の所得が下がれば再び手当を受給することができます。転職や働き方の変更、控除の活用などで所得を調整することは可能です。ただし、無理に収入を下げる必要はありません。長期的な視点で考えると、収入を増やして経済的自立を目指す方が良い場合も多いからです。手当に頼らない生活を築くことも大切な選択肢の一つです。それでも一時的に手当が必要な場合は、合法的な方法で所得調整を検討してみましょう。

収入が増えるのは嬉しいけど、手当がなくなると不安になっちゃう

その気持ちはよく分かります。でも収入が安定してくれば、手当以上の経済的メリットがあることが多いんですよ

申請手続きと必要書類について

児童扶養手当の申請は複雑に感じるかもしれませんが、必要な書類を事前に準備しておけばスムーズに進められます。申請から支給開始まで通常1〜2か月程度かかるので、できるだけ早めに手続きを始めることをお勧めします。所得制限の審査で最も重要なのは所得証明書類です。給与所得者と自営業者では提出書類が異なるので、ご自身の働き方に合わせて準備してくださいね。一度申請すれば自動的に継続されますが、毎年8月の現況届提出は忘れずに行いましょう。

申請の流れと提出先

児童扶養手当の申請は、お住まいの市区町村の子育て支援課や福祉課で行います。まず電話で相談の予約を取り、必要書類について詳しく聞いておくと安心です。申請時には窓口で面談があり、家族構成や収入状況について詳しく聞かれます。虚偽の申告は後でばれてしまうので、正直に答えることが大切です。申請が受理されると、通常1〜2か月後に認定・却下の通知が郵送されます。認定された場合は、申請月の翌月分から手当が支給開始されます。

STEP
事前相談と書類準備

市区町村の窓口に電話で相談し、必要書類を確認。戸籍謄本や所得証明書など時間がかかるものは早めに取得。

STEP
申請書類の提出

窓口で申請書を記入し、必要書類とともに提出。担当者との面談で詳しい状況を説明。

STEP
審査と支給決定

1〜2か月後に認定・却下の通知が郵送。認定された場合は申請月の翌月から支給開始。

必要な書類と準備するもの

申請に必要な書類は、基本的なものと個別の事情に応じたものがあります。基本書類としては、申請者と児童の戸籍謄本、住民票、申請者の本人確認書類、預金通帳、印鑑などが必要です。所得に関する書類は特に重要で、給与所得者なら源泉徴収票、自営業者なら確定申告書の控えが必要になります。養育費を受け取っている場合は、離婚協議書や調停調書も必要です。マイナンバーカードがあれば手続きが簡素化される場合もあるので、持参することをお勧めします。

所得証明に関する書類

所得制限の審査で最も重要なのが所得証明書類です。前年の1月1日時点で現在のお住まいにいなかった場合は、前住所地の市区町村で所得証明書を取得する必要があります。給与所得者の場合は源泉徴収票で所得が確認できますが、パートで複数の勤務先がある場合は全ての源泉徴収票が必要です。自営業者の場合は確定申告書第一表の控えと所得の内訳書が必要になります。未申告の場合は申告を済ませてから手当の申請を行う必要があります。

所得証明に必要な書類
  • 給与所得者:源泉徴収票
  • 自営業者:確定申告書第一表の控え
  • 年金受給者:年金源泉徴収票
  • 前住所地:所得証明書
  • 養育費:離婚協議書・調停調書

その他の必要書類

個別の事情に応じて追加書類が必要になる場合があります。離婚の場合は離婚届の受理証明書、死別の場合は死亡診断書の写し、未婚の場合は戸籍謄本で確認できます。DV被害で避難している場合は保護命令の写しや一時保護証明書が必要です。障害がある方の場合は身体障害者手帳や療育手帳の写しが必要になります。外国人の場合は在留カードの写しも必要です。事前に窓口で確認しておくと、何度も足を運ぶ必要がなくなります。

現況届の提出と更新手続き

児童扶養手当を継続して受給するためには、毎年8月に現況届を提出する必要があります。現況届は受給資格の継続確認と、最新の所得状況の審査を行うためのものです。この手続きを忘れると、11月分以降の手当が停止されてしまいます。現況届の用紙は7月下旬に郵送されてくるので、必要事項を記入して期限までに提出しましょう。2年間連続で現況届を提出しないと、受給権が時効で消滅してしまうので注意が必要です。

提出時期必要書類注意事項提出しない場合
毎年8月現況届所得証明書添付の場合あり11月分から支給停止
随時変更届住所・収入変更時過払い・未払いの可能性
随時資格喪失届再婚・転出時手当返還義務
随時額改定請求書子どもの増減時支給額に影響

母子家庭手当の所得制限でよくある5つの誤解

児童扶養手当の所得制限について、多くのお母さんが誤解していることがあります。正しい知識を持っていないと、本来受給できるはずの手当をもらい損ねたり、逆に不正受給になってしまう可能性もあります。ここでは、特によくある5つの誤解について詳しく説明していきます。これらの誤解を解いて、正しい知識を身につけることで、手当を適切に活用できるようになりますよ。窓口での相談時にも、正確な情報を伝えられるようになります。

「年収」と「所得」を混同している

最も多い誤解が「年収」と「所得」の混同です。「年収200万円だから手当はもらえない」と思い込んでいるお母さんがいますが、実際は年収200万円でも所得は約79万円程度になり、満額受給が可能な場合がほとんどです。年収とは1年間に受け取った給与の総額で、所得とは年収から給与所得控除や各種控除を差し引いた金額のことです。給与明細に書かれている「支給額合計」の年間合計が年収で、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から更に控除を差し引いたものが所得になります。

年収250万円だから手当はもらえないと思ってたけど、実際は所得で計算するのね

はい!年収250万円でも各種控除を引けば所得は150万円程度になって、一部支給は十分可能ですよ

扶養親族の数え方を間違えている

扶養親族の数え方も誤解が多い部分です。「子ども2人だから扶養親族は2人」と思いがちですが、実際は税法上の扶養親族として認められる人数を数えます。16歳未満の年少扶養親族は税法上は扶養控除の対象外ですが、児童扶養手当の扶養親族数には含まれます。逆に、16歳以上のお子さんでアルバイト収入が年間103万円を超えている場合は扶養親族に含まれません。同居している祖父母も、所得が38万円以下で生計を一にしていれば扶養親族に含まれる場合があります。

年齢・状況扶養親族に含む扶養親族に含まない備考
16歳未満の子年少扶養親族
16歳以上の子(所得38万円以下)控除対象扶養親族
16歳以上の子(所得38万円超)独立性あり
同居の祖父母(所得38万円以下)生計一の場合

控除できるものを知らない

利用できる控除を知らないために、実際よりも高い所得で計算してしまうケースがあります。ひとり親控除35万円は大きな控除ですが、その他にも医療費控除、生命保険料控除、地震保険料控除など様々な控除があります。医療費控除は家族全員の医療費が年間10万円を超えた場合に適用され、通院のための交通費も含まれます。生命保険料控除では学資保険の保険料も対象になります。これらの控除を見落としていると、本来受給できる手当を受け損ねてしまう可能性があります。

養育費の計算方法を誤解している

養育費について「もらっていない」と申告するお母さんがいますが、実際は一時的に受け取ったお金も申告対象になります。元夫から子どもの学費や医療費として直接もらったお金も養育費に該当します。逆に、調停や協議で養育費の取り決めをしていても、実際に受け取っていなければ申告の必要はありません。ただし、一時的に未払いでも後で受け取る予定がある場合は注意が必要です。養育費の8割算入ルールも正しく理解して、適切に申告することが大切です。

養育費に含まれるもの
  • 毎月の定額養育費
  • 学費として受け取ったお金
  • 医療費として受け取ったお金
  • 一時的な生活費支援
  • 子どもの衣服代など直接支援

同居家族の所得影響を見落としている

お母さん本人の所得だけでなく、同居している扶養義務者の所得も審査対象になることを知らないケースがあります。実家に戻って両親と同居している場合、両親の所得が扶養義務者の所得制限を超えていると手当が支給停止になります。兄弟姉妹と同居している場合も同様です。住民票上は別世帯でも、同じ住所に住んでいれば扶養義務者として判定される場合があります。そのため、「一人暮らしなのに手当がもらえない」という相談を受けることがありますが、同じ建物に扶養義務者が住んでいる可能性を確認する必要があります。

所得制限内で最大限活用できる母子家庭向け支援制度

児童扶養手当以外にも、母子家庭を支援する制度はたくさんあります。これらの制度を組み合わせることで、生活をより安定させることができます。各制度には独自の所得制限があるので、児童扶養手当の対象外になっても利用できる制度があるかもしれません。医療費助成、住宅手当、各種減免制度など、使えるものは積極的に活用していきましょう。お住まいの自治体によって制度の内容や所得制限が異なるので、定期的に最新情報を確認することも大切ですね。

医療費助成制度の所得制限

母子家庭等医療費助成制度は、母子家庭のお母さんとお子さんの医療費自己負担分を助成する制度です。この制度の所得制限は児童扶養手当と同じ基準を使用している自治体が多いですが、独自の基準を設けている場合もあります。一般的に、扶養親族1人の場合は所得230万円以下が対象になることが多く、児童扶養手当より所得制限が高めに設定されています。通院1回につき500円程度の自己負担で済む場合が多く、入院時の食事代は自己負担になることが一般的です。お子さんが高校生になっても対象になる自治体もあります。

住宅手当の所得制限

母子家庭向けの住宅手当は自治体独自の制度で、実施していない自治体もありますが、利用できれば月5,000円〜10,000円程度の助成を受けられます。所得制限は児童扶養手当の一部支給所得制限以下に設定されている場合が多く、比較的利用しやすい制度です。20歳未満のお子さんを養育していること、民間賃貸住宅に居住していること、家賃が一定額以上であることなどが条件になります。申請時期や支給期間に制限がある場合もあるので、早めに確認しておくことをお勧めします。公営住宅への入居を希望する場合は、母子家庭優先枠を設けている自治体もあります。

自治体例支給額所得制限その他条件
東京都国立市家賃の1/3(上限10,000円)児童扶養手当準拠6か月以上居住
神奈川県鎌倉市家賃-15,000円(上限9,000円)児童扶養手当準拠民間賃貸のみ
千葉県君津市5,000円児童扶養手当準拠家賃10,000円以上
東京都武蔵野市10,000円児童扶養手当準拠18歳未満の子あり

減免制度との併用テクニック

児童扶養手当受給世帯は、様々な減免制度を利用できます。国民健康保険料の減免では、7割〜2割の軽減を受けられる場合があります。国民年金保険料の免除制度では、全額免除から1/4免除まで段階的に設定されています。JR通勤定期券の3割引、都営交通の無料パス、粗大ごみ処理手数料の免除、上下水道料金の減免など、生活費を大幅に節約できる制度があります。これらの制度を組み合わせることで、月数万円の節約効果が期待できます。申請は各担当窓口で個別に行う必要がありますが、一度手続きすれば継続的に恩恵を受けられます。

主な減免制度
  • 国民健康保険料:最大7割軽減
  • 国民年金保険料:全額〜1/4免除
  • JR通勤定期券:3割引
  • 粗大ごみ処理手数料:免除
  • 上下水道料金:基本料金減免
  • 保育料:減額・免除

よくある質問と回答(FAQ)

年収いくらまで児童扶養手当をもらえますか?

扶養親族1人(子ども1人)の場合、全部支給は年収約190万円まで、一部支給は年収約385万円まで受給可能です。ただし、養育費を受け取っている場合はその8割が所得に加算されるため、実際の年収制限はより低くなります。

養育費をもらっていることを隠すとバレますか?

養育費の申告漏れは調査により発覚する可能性があります。銀行振込の記録や税務調査で判明した場合、手当の全額返還を求められることがあります。正直に申告することが重要です。

実家で両親と同居していても手当はもらえますか?

両親の所得が扶養義務者の所得制限を超えていなければ受給可能です。扶養親族1人の場合、両親の所得が274万円以下であれば手当を受給できます。両親が年金受給者の場合、年金収入から公的年金控除を差し引いた所得で判定されます。

所得制限を超えた場合、いつから手当が停止されますか?

前年の所得で判定されるため、8月の現況届提出時に審査が行われ、所得制限を超えていることが判明した場合は8月分から手当が停止されます。ただし、年の途中で収入が大幅に減少した場合は、変更届を提出することで再審査を受けることができます。

一部支給の場合、手当額はどのように決まりますか?

一部支給額は計算式によって決まります。子ども1人の場合「45,500円-(所得額-107万円)×0.025」で算出されます。例えば所得150万円の場合、45,500円-(150万円-107万円)×0.025=34,750円が月額支給額となります。

扶養親族に祖父母は含まれますか?

同居している祖父母で、年間所得が38万円以下(公的年金のみの場合は年額108万円以下)であり、生計を一にしている場合は扶養親族に含まれます。扶養親族数が増えることで所得制限が緩和されるため、該当する場合は必ず申告しましょう。

再婚した場合、手当はどうなりますか?

法律上の結婚だけでなく、事実婚(同居して夫婦同様の生活をしている状態)でも受給資格を失います。婚姻した場合は速やかに資格喪失届を提出する必要があり、届出が遅れると手当の返還を求められることがあります。

医療費控除はどのくらい所得を下げる効果がありますか?

医療費控除は年間医療費が10万円を超えた部分が控除対象となります。例えば年間医療費が20万円の場合、10万円が控除され所得が10万円下がります。子どもの歯科矯正や通院交通費も含まれるため、意外と控除額が大きくなる場合があります。

まとめ

母子家庭の手当と所得制限について詳しく解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。児童扶養手当は母子家庭の生活を支える重要な制度ですが、所得制限の仕組みを正しく理解することで、より効果的に活用できるようになります。令和6年11月の改定により所得制限が緩和され、より多くのお母さんが手当を受給できるようになりました。

所得制限は複雑に感じるかもしれませんが、年収と所得の違いを理解し、適切な控除を活用することで、思っているより多くの方が対象になる可能性があります。養育費の取り扱いや扶養義務者の所得制限など、注意すべきポイントもありますが、正しい知識を持って適切に申告することが大切です。

手当だけに頼るのではなく、医療費助成や住宅手当、各種減免制度も組み合わせることで、生活をより安定させることができます。お住まいの自治体によって制度の内容が異なるので、定期的に最新情報を確認し、利用できる制度は積極的に活用していきましょう。

困ったときは一人で悩まず、市区町村の窓口や母子家庭支援センターに相談することをお勧めします。同じような状況のお母さんたちと情報交換することも、新しい支援制度を知るきっかけになるかもしれません。母子家庭での子育ては大変ですが、利用できる制度を最大限活用して、お子さんと一緒に安心して暮らせる環境を整えていってください。

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