矢絣は卒業式に不適切と言われる理由と袴姿の正しい選び方

卒業式での袴姿は多くの女子大生が選ぶスタイルですが、着物選びには伝統的なマナーが存在します。特に矢絣は大学の卒業式に向かないとされる意見が多く見られます。矢絣は明治・大正時代の女学生が日常の通学着として愛用した柄であり、式典には本来そぐわないと考えられてきました。

一方で振袖や色無地が卒業式には適しているとされ、特に振袖は華やかさを演出できるため人気です。大学によっては矢絣の着用を禁止している例もあり、着物の格式やTPOを考慮した選択が求められます。

袴選びは単なるファッション選択ではなく、学位取得という人生の節目にふさわしい装いを考える機会でもあります。近年ではルールが緩和される傾向もありますが、基本的な知識を持って選ぶことが後悔のない卒業式を迎える秘訣です。

目次

卒業式における着物と袴の格式について

卒業式という式典に着用する着物には格式があり、正装と普段着の区別が重要です。伝統的には式典には正装である振袖、訪問着、付け下げ、色無地などが適しているとされています。これらは「タレもの」と呼ばれる染めの着物で、格式の高い場にふさわしいとされています。

反対に矢絣や銘仙といった絣物は、本来は普段着として位置づけられてきました。明治・大正時代には女学生の通学着として親しまれた歴史がありますが、卒業式のような晴れの舞台には格式が足りないという見方があります。大学によっては明確に矢絣を禁止している例もあり、着物の文化的背景を知ることが重要です。

大学卒業式の袴に適した着物の種類と選び方

大学卒業式に袴を合わせる際の着物は、いくつかの選択肢があります。格式を重視する場合、振袖は未婚女性の第一礼装として最適です。特に中振袖は袴との相性が良く、バランスが取れています。色無地は五つ紋付きであれば格式高く、すっきりとした印象を与えます。付け下げや訪問着も格式ある着物として認められており、大人っぽい雰囲気を出したい場合に向いています。

着物選びではいくつかのポイントに注意しましょう。

  • 袴との丈バランスを確認する(袖が袴より長すぎないように)
  • 季節に合った素材を選ぶ(3月の卒業式には絹製がおすすめ)
  • 一重のものは避ける(裏地のある着物を選ぶ)

柄や色については、自分の好みを優先してかまいませんが、あまりに派手な柄は式の厳粛さを損なう可能性があります。レンタルの場合は事前に試着し、全体のバランスを確認することが大切です。既製品のレンタル着物は、ポリエステル製が多いですが、手持ちの着物を活用する場合は絹製が多く、質感の違いがあることを認識しておきましょう。フォーマルな場では絹製が基本となりますが、現代ではこだわりすぎる必要はないでしょう。

矢絣が卒業式に不向きとされる歴史的背景

矢絣が卒業式に不向きとされる理由は、その歴史的背景に由来します。矢絣は江戸時代から続く伝統的な絣織物で、主に日常着として発展してきました。明治から大正時代にかけて女学生の通学着として広く使われたことから「はいからさん」のイメージと結びついています。

矢絣の特徴は以下の通りです:

  • 絣織りの技法を用いて矢羽根模様を表現している
  • 木綿やウールなど実用的な素材で作られることが多い
  • カジュアルな普段着として位置づけられてきた

着物の格付けにおいて、矢絣は「普段着」に分類され、式典に着用する「礼装」とは区別されています。デザイン科の授業では着物の文様について学び、「おめでたい席で着る文様は決まっている」と教えられることがあります。卒業式という人生の節目となる式典では、正装を選ぶことが望ましいという考え方が根強く残っています。

一方、現代では着物文化の簡略化が進み、厳密なルールを気にしない人も増えています。「はいからさん」のイメージに憧れる若い女性も多く、袴との組み合わせで学生らしい清楚な印象を演出できることから、矢絣を選ぶ卒業生も見られます。ただし、特に着物文化が根強い地域や伝統校では、まだ矢絣の着用を避ける傾向があることは知っておく必要があるでしょう。

卒業式で振袖を選ぶメリットと注意点

卒業式で振袖を選ぶことには多くのメリットがあります。第一に、振袖は未婚女性の第一礼装であり、卒業式という人生の節目にふさわしい格式を備えています。華やかな柄と色彩は晴れの日を引き立て、記念写真映えするのも大きな魅力です。成人式で着用した振袖を再び着る機会になるため、高価な着物を有効活用できる点も経済的です。

振袖を袴と合わせる際の注意点として、袖の長さと袴とのバランスが挙げられます。

  • 大振袖(本振袖)は袖が非常に長く、袴との釣り合いが取りにくい
  • 中振袖が袴との組み合わせに最も適している
  • 袴の丈は通常より少し短めにし、袖とのバランスを取ることが望ましい

振袖の柄が派手すぎると、袴と組み合わせたときにちぐはぐな印象になることがあります。落ち着いた柄の振袖の方が袴との相性が良いでしょう。袴の色選びも重要で、振袖の色調と調和するものを選ぶと統一感が生まれます。

卒業式当日は、着付けに時間がかかることを考慮して余裕を持ったスケジュールを組みましょう。特に振袖は着付けが複雑なため、プロの着付師に依頼するか、事前に練習をしておくことが重要です。袴の着付けも専門的な技術が必要なので、慣れない場合は専門店に依頼することをおすすめします。着崩れを防ぐため、動きやすさを確保しながらもしっかりと着付けてもらうことが大切です。

矢絣と振袖の違いとそれぞれの用途

矢絣と振袖は着物の中でも異なる用途と特徴を持っています。矢絣は絣織りの技法で作られた普段着で、江戸時代から親しまれてきました。矢羽根模様には「まっすぐ前に進む」という縁起の良い意味があり、女性の晴れ着としても珍重されてきた歴史があります。

一方の振袖は若い未婚女性の礼装として発展し、袖の長さによって大振袖・中振袖・小振袖に分類されます。成人式や結婚式の参列など、人生の節目や格式高い場で着用されることが多い着物です。両者の最も大きな違いは「普段着」と「礼装」という位置づけにあり、この区別が卒業式での選択に影響します。

矢絣の本来の用途と現代での位置づけ

矢絣は元々、江戸時代から続く伝統的な絣織物の一種で、本来は日常着として位置づけられてきました。矢羽根模様は「まっすぐ前に進み、二度と戻らない」という意味を持ち、女性が嫁ぐ際の縁起物としても用いられてきた歴史があります。明治・大正期には女学生の通学着として広く普及し、文学作品や漫画「はいからさんが通る」などでもその姿が描かれています。

矢絣の特徴と由来について詳しく見ていきましょう。

  • 絣織りという技法で糸を先に染めてから織り上げる
  • 主に矢羽根模様が特徴的(直線的で幾何学的なデザイン)
  • 木綿や紬など実用的な素材で作られることが多い
  • 御殿女中が着用していたという歴史的背景がある

現代における矢絣の位置づけは、古典的でありながらモダンな印象を与える着物として再評価されています。特に若い世代には「はいからさん」のイメージから憧れる人も多く、カジュアルな着物として人気があります。袴と合わせると学生らしい清楚な印象を作り出せることから、卒業式に着たいと考える学生もいます。

ただし、着物の格式から見ると矢絣は依然として「普段着」に分類されるため、正式な式典には不向きとする考え方も根強く残っています。大学の卒業式という場面では、地域や学校の文化によって受け止め方が異なります。京都などの伝統的な地域では矢絣の着用に否定的な見方をする人もいる一方、現代的な感覚では「学生らしさ」を表現できる着物として受け入れられつつあります。着用を検討する際は、自分の大学の雰囲気や地域性を考慮に入れることが大切です。

振袖の種類と袴との組み合わせ方法

振袖にはいくつかの種類があり、それぞれ袴との組み合わせ方が異なります。大振袖(本振袖)は袖丈が約114センチと最も長く、裾近くまで袖が届きます。中振袖は約100センチ前後、小振袖は約75センチ程度の袖丈です。卒業式の袴に組み合わせる場合、一般的に中振袖が最も調和しやすいとされています。

振袖と袴の組み合わせ方について、具体的なポイントを見ていきましょう。

  • 袴の丈は通常より少し短めに調整し、振袖の柄が見えるようにする
  • 袴の色は振袖の配色と調和するものを選ぶ(対比色や同系色など)
  • 袋帯ではなく、半幅帯を使うことで動きやすさを確保する
  • 足元は白足袋に草履が正式だが、編み上げブーツを選ぶ人も多い

大振袖を袴に合わせる場合、袖が袴より長くなりすぎないよう注意が必要です。「袖が袴のすそと同じ位置、もしくは袴の方が下がっている」状態が見た目のバランスが良いとされています。袖が袴より下に出てしまうと格好悪く見えるため、着付けの際に袖の長さと袴の丈のバランスをよく確認しましょう。

振袖の柄と色は卒業式という晴れの舞台にふさわしいものを選ぶことが重要です。あまりに派手な成人式向けの柄よりも、少し落ち着いた雰囲気の柄の方が袴と調和しやすいです。レンタルの場合は、袴用にデザインされた振袖を選ぶと全体のバランスが取りやすくなります。

髪型や小物も含めたトータルコーディネートを考えることが大切です。振袖に合わせる髪型は、伝統的な日本髪からアップスタイル、編み込みなど様々な選択肢があります。髪飾りは振袖の華やかさに合わせつつ、学生らしい清楚さも意識すると良いでしょう。袴姿は和装でありながら動きやすさも求められるため、実用性と見た目のバランスを考慮した選択が望ましいです。

色無地や小紋など他の選択肢の検討

卒業式の袴姿に振袖や矢絣以外の選択肢として、色無地や小紋があります。色無地は無地の染め着物で、格式の高い場にふさわしい正装です。特に五つ紋付きの色無地は第二礼装として認められており、卒業式のような公式行事に適しています。すっきりとした印象で大人っぽく、品格のある装いを実現できることが魅力です。

小紋は地紋や小さな柄が全体に散らされた着物で、色無地よりくだけた印象ながらも、フォーマルな場にも対応できる汎用性があります。江戸小紋のような伝統的な柄から現代的なデザインまで幅広く、自分の好みやスタイルに合わせて選べる点が魅力です。

色無地や小紋を選ぶ際のメリットは以下の通りです:

  • 振袖よりも落ち着いた印象で、大人の女性らしさを演出できる
  • 卒業後も様々な場面で活用できる実用性がある
  • 袴とのバランスが取りやすく、全体の調和が図りやすい
  • 地味になりすぎない明るい色を選べば、晴れの日にふさわしい華やかさも出せる

色無地を選ぶ際は、「先生のような印象になる」と心配する声もありますが、若い女性が着ればその心配はほとんどありません。むしろ同級生の多くが振袖や派手な柄の着物を選ぶ中で、色無地の清楚な印象は「凛として目立つ」という利点があります。紋の数(一つ紋、三つ紋、五つ紋)によって格式が変わりますが、卒業式なら三つ紋以上が望ましいでしょう。

小紋を選ぶ場合は、江戸小紋のような格調高い伝統柄か、落ち着いた華やかさのある現代的な柄がおすすめです。袴と合わせる際は、小紋の柄と袴の色のバランスを考慮し、全体として調和のとれた装いを心がけましょう。

色無地や小紋は振袖に比べて着付けがやや簡単で、動きやすいという実用面のメリットもあります。卒業式当日は長時間座ったり移動したりする機会が多いため、この点は重要な考慮事項となるでしょう。卒業後も冠婚葬祭や各種行事に着回せる点も、経済的な観点から魅力的です。

卒業式での袴姿に関する実体験とアドバイス

卒業式で袴を着用した方々の実体験からは、実際の選択肢が地域や大学によって異なることがわかります。京都の大学では様々なスタイルが見られ、振袖の方、矢絣に袴の方、色無地に袴の方など多様です。振袖を選んだ理由としては「袴を履くとせっかくの裾の柄が見えなくなるから」という声や、「成人式で着たものをもう一度着たくて」という理由があります。

矢絣を選んだ方からは「今っぽいから」「モダンな感じでかっこいい」というコメントがあり、学生としての装いを重視する視点が見られます。どの選択肢を取るにしても、自分自身が後悔しないスタイルを選ぶことが重要です。卒業式という一生に一度の機会を、自分らしく迎えるための参考として実体験を活かしましょう。

卒業式と謝恩会それぞれに適した和装の選び方

卒業式と謝恩会では、それぞれの場の性質に合わせた和装の選び方が求められます。卒業式は公式行事であり、より格式を重んじる場とされています。一方、謝恩会はお祝いの席であり、華やかさや個性を表現しやすい場です。この違いを踏まえた着物選びが重要になります。

卒業式には、格式を考慮した着物が適しています。具体的には以下のような選択肢があります。

  • 正装としての振袖(中振袖が袴とのバランスが良い)
  • 五つ紋や三つ紋付きの色無地(凛とした印象で式の厳粛さに合う)
  • 格調高い小紋や江戸小紋(伝統と格式を感じさせる)
  • 訪問着や付け下げ(格式と華やかさのバランスが取れている)

謝恩会では、より自由度の高い装いが許されます。卒業式で袴姿だった場合、謝恩会では以下のような選択肢が考えられます。

  • 振袖(卒業式で袴と合わせた場合は、袴なしで全体の柄を楽しむ)
  • 矢絣(卒業式では控えた場合でも、謝恩会ならはいからさん風の装いが映える)
  • 訪問着や付け下げ(格式と華やかさを兼ね備えた選択肢)
  • 洋装のパーティドレス(和装から洋装への着替えも人気)

実際の体験談として、「卒業式は矢絣+袴、謝恩会は振袖」という組み合わせを推奨する声もあります。謝恩会はホテルの宴会場など華やかな場所で行われることが多く、振袖かドレスが圧倒的に多いとされています。逆に「卒業式に振袖+袴、謝恩会に矢絣」という提案もあり、それぞれの場の雰囲気や自分の好みによって選択することが大切です。

選び方のポイントとして、一日の動きやすさも考慮しましょう。卒業式から謝恩会まで和装で過ごす場合、着崩れを最小限に抑えるための工夫が必要です。着付けをし直す時間や場所があるなら、卒業式と謝恩会で異なる装いを楽しむこともできます。着替える場合は、荷物の管理や着付けの手配など、事前の準備が重要になります。

友人や同級生との調和も考慮点の一つです。あまりにも周囲と違う装いにすると浮いてしまう可能性もあるため、前年の卒業式の様子を先輩から聞いたり、当日の雰囲気を想像したりして判断材料にすると良いでしょう。自分らしさを大切にしながらも、場の空気に調和した選択をすることで、思い出に残る素敵な一日になるはずです。

袴のレンタル時に確認すべきポイントと注意事項

袴をレンタルする際は、当日のトラブルを避けるためにいくつかの重要なポイントを確認しておく必要があります。最も重要なのは袴の丈です。試着の段階で丈を確認し、適切な長さに調整してもらいましょう。丈が短すぎると見栄えが悪くなり、長すぎると動きにくくなります。理想的な丈は、床から2〜3センチ程度浮いた状態です。

袴のレンタル時に確認すべきポイントを詳しく見ていきましょう。

  • 袴の丈が自分の身長に合っているか(短すぎないか)
  • 着物と袴の色のバランスが調和しているか
  • 足袋のサイズと枚数(予備があると安心)
  • 履物のサイズと歩きやすさ(草履かブーツか)
  • 着付けに必要な小物がすべて揃っているか

実体験として、予約したはずの袴の丈が短かったり、同時にレンタルした履物のデザインが違っていたりというトラブルがあったという声もあります。特に身長が高い方は、袴が短く見えてしまう可能性があるため、注意が必要です。レンタル品の受け取り時には、必ず試着してみることをおすすめします。

レンタルの予約は早めに行うことが重要です。卒業シーズンは人気の柄や色がすぐに予約で埋まってしまうことがあります。理想的には半年前から3ヶ月前には予約を入れておくと安心です。当日のスケジュールも考慮し、着付けの時間を確保できるよう計画を立てましょう。

レンタル料金は着物の種類や付属品によって異なります。一般的に振袖セットは2万円〜5万円程度、小紋や色無地のセットは1万5千円〜3万円程度が相場です。着付け料金が含まれているかどうかも確認しておきましょう。着付けを別に依頼する場合は、事前に予約が必要です。

返却方法と期限も確認しておくことが大切です。多くの場合、翌日または数日以内の返却が求められます。汚れや破損があった場合の対応についても、レンタル前に確認しておくと安心です。思い出に残る卒業式をトラブルなく過ごすためにも、レンタル時の確認事項を丁寧にチェックしておきましょう。

現代の大学卒業式における着物のルールと実態

現代の大学卒業式における着物のルールは、伝統的な格式を守る考え方と、より自由な表現を認める傾向が混在しています。実態として、多くの大学では袴姿で卒業式に臨む女子学生が8割程度を占め、残りがドレスやスーツなどの洋装という構成が一般的です。袴を着用する学生の中では、振袖に袴を合わせるスタイルが半数以上を占める大学も多いです。

現代の卒業式でみられる着物スタイルの実態は以下のとおりです:

  • 振袖+袴:華やかで目立つスタイル(中振袖が多い)
  • 小紋柄の小振袖+袴:専門学校ではこのスタイルが多い
  • 矢羽根柄の着物+袴:学生らしいはいからさん風のイメージ
  • 色無地+袴:凛とした印象で周囲と差別化できる
  • 訪問着や付け下げ+袴:大人っぽく品のあるスタイル

「いまどき着物のしきたりに詳しい人は皆無です。文句を付ける人も居ません」という意見もあり、厳格なルールよりも自分が納得できるスタイルを選ぶことが重視される傾向にあります。特に都市部の大学では、様々なスタイルが許容されており、矢絣を着る学生も珍しくありません。

足元のスタイルも多様化しており、白足袋と草履という伝統的な組み合わせだけでなく、編み上げブーツを合わせるスタイルも人気です。髪型においても、伝統的な日本髪から現代風のアップスタイル、大きな花飾りをつけたスタイルまで様々です。「昨年駅で見かけた集団の中で、きちんと髪をまとめていただけで凛として目立ったお嬢さん」という観察からは、シンプルで上品な装いが逆に目を引くこともわかります。

ただし、着物文化が根強い地域や伝統校では、まだ矢絣などの普段着を避ける傾向も見られます。京都市内の大学でも様々なスタイルが見られるものの、「あのうるさい京都でもこうなのですから、日本中どこでも同じことと思います」という意見があるように、地域による差は徐々に小さくなっています。最終的には「お好きな物をどうぞ」という寛容な姿勢が広がりつつあり、自分が後悔しないスタイルを選ぶことが最も重要とされています。

矢絣や振袖以外の卒業式袴スタイルの選択肢

卒業式の和装スタイルは振袖や矢絣以外にも多様な選択肢があります。色無地は五つ紋付きであれば正装として認められ、凛とした印象を与えます。訪問着や付け下げは格式と華やかさを兼ね備えた中間的な選択肢で、卒業後も様々な場で活用できる実用性があります。

江戸小紋は小さな繊細な柄が特徴で、格調高い印象を与えるため式典にも適しています。二尺袖と呼ばれる小振袖の形態も、袴との相性が良く学生らしい印象を作り出せることから人気があります。伝統と個性のバランスを考慮しながら、自分に合った選択肢を探してみましょう。

卒業式に適した色無地や訪問着の選び方

色無地は一色で染められた無地の着物で、紋の数によって格式が変わります。卒業式のような公式行事には、五つ紋や三つ紋付きの色無地が適しています。色選びのポイントは、卒業の春という季節感と晴れの日にふさわしい明るさのバランスです。淡いピンクやグリーン、水色などの優しい色調は若さを引き立て、袴との組み合わせも映えます。

訪問着は準礼装として位置づけられ、色無地よりも華やかながら振袖ほどではない、バランスの取れた装いを実現できます。卒業式に訪問着を選ぶ際は、以下のポイントに注意しましょう。

  • 全体に柄が入っているが、振袖ほど派手すぎない上品なデザイン
  • 袴に合わせるため、裾の柄が控えめなものを選ぶと調和しやすい
  • 季節感のある春らしい柄や色調(桜、梅、若葉など)
  • 自分の年齢や雰囲気に合った品のあるデザイン

色無地や訪問着は卒業式だけでなく、その後の冠婚葬祭や各種行事にも着用できる実用性があります。購入する場合は将来的な着用機会も考慮して選ぶと良いでしょう。レンタルの場合は、袴との色のバランスを重視して選びましょう。

付け下げは訪問着と小紋の中間的な位置づけで、上半身と裾に柄が入った着物です。若い女性が着ると品格と華やかさを兼ね備えた印象になります。袴との組み合わせでは、裾の柄が隠れる点を考慮し、上半身の柄が映えるデザインを選ぶとバランスが取れます。

江戸小紋は小さな柄が全体に染められた着物で、遠目には無地のように見える洗練された印象があります。伝統的な柄を現代的にアレンジしたデザインも多く、若い女性にも取り入れやすいです。袴との相性も良く、凛とした和の美しさを表現できます。

これらの選択肢は振袖と矢絣の中間的な位置づけとして、格式も適度に保ちながら個性を表現できる点が魅力です。自分の好みや大学の雰囲気、予算などを総合的に考慮して選ぶことが大切です。レンタルショップでは実際に着用して全体のバランスを確認し、納得のいく装いを見つけましょう。

袴に合わせる小物や履物の選択ポイント

袴姿を引き立てる小物や履物の選択は、全体の印象を大きく左右します。帯は袴スタイルでは半幅帯が一般的です。振袖に袴を合わせる場合でも、通常の振袖スタイルで使う袋帯ではなく半幅帯を使うことで、動きやすさと見た目のバランスを両立できます。帯の色や柄は着物との調和を考え、着物が派手な場合は控えめな帯を、着物がシンプルな場合は帯で華やかさを加えるという考え方が参考になります。

履物の選択は大きく分けて草履とブーツの2種類があります。それぞれの特徴を比較してみましょう。

  • 草履:伝統的で格式高い印象。白足袋と合わせて正統派の和装に
  • 編み上げブーツ:歩きやすく動きやすい。学生らしいカジュアルな印象に
  • 草履下駄:草履と下駄の中間的なデザインで、歩きやすさと和の雰囲気を両立

草履を選ぶ場合は、事前に履き慣れておくことが重要です。当日初めて長時間草履を履くと足が痛くなる可能性があります。足袋は五枚こはぜの深いタイプを選ぶと、足首まできれいに隠れて見栄えが良くなります。予備の足袋を用意しておくと安心です。

ブーツを選ぶ場合は、袴の色と調和する色(多くは黒や茶色)を選び、ヒールの高さは歩きやすさと見た目のバランスを考慮して決めましょう。ヒールが高すぎると疲れやすくなるため、程よい高さのものがおすすめです。

髪飾りは着物の雰囲気に合わせて選ぶと統一感が出ます。振袖に袴の場合は華やかな飾りを、色無地や小紋なら控えめな飾りが調和します。季節感を意識して春らしい花の髪飾りを選ぶのも素敵です。髪型によって似合う髪飾りが異なるため、ヘアスタイルが決まってから選ぶと失敗が少なくなります。

バッグは袴姿には巾着が伝統的ですが、小さなハンドバッグやショルダーバッグを選ぶ人も増えています。当日必要な荷物を入れられるサイズで、着物や袴の色と調和するものを選びましょう。式典中は持ち物が多すぎると動きにくくなるため、最小限の荷物にまとめることをおすすめします。

これらの小物選びは全体のコーディネートを左右する重要な要素です。レンタルの場合はセットになっていることも多いですが、自分の好みやスタイルに合わせてカスタマイズできる場合は、トータルバランスを考えて選ぶことが大切です。

卒業式後の和装活用法と保管方法

卒業式で着用した和装は、その後も様々な場面で活用できる価値ある衣装です。振袖は成人式だけでなく、友人の結婚式の参列や各種お祝い事に着用できます。色無地や訪問着は冠婚葬祭全般に使える万能な着物です。小紋は茶会やお食事会、美術館巡りなどカジュアルなお出かけにも適しています。

卒業式後の和装の活用方法をいくつか紹介します。

  • 友人の結婚式参列:振袖や訪問着が適しています
  • お茶会や文化的なイベント:小紋や江戸小紋が活躍します
  • 季節のお祭りや行事:浴衣だけでなく小紋も楽しめます
  • 家族の記念撮影:特別な日の装いとして和装は印象的です
  • 就職後の業界行事:業種によっては和装が好まれる場合もあります

和装を長く美しく保つためには、適切な保管方法が重要です。着用後は必ず汚れや湿気を取り除いてから保管します。専門のクリーニング店に出すことが理想的ですが、軽い着用なら風を通して陰干しした後、たたみ方に注意して保管します。

着物の保管には、防虫剤を使用し、湿気の少ない場所に保管しましょう。桐箪笥が理想的ですが、専用の保管箱や不織布の保管袋も有効です。定期的に風を通すことで、カビや虫食いを防ぐことができます。帯や小物類も同様に丁寧に保管しましょう。

特に振袖などの晴れ着は、綿や真綿が入っているものがあり、折り目がついてシワになりやすいため注意が必要です。定期的に畳み直しをするか、専門店に相談することをおすすめします。着物の保管に不安がある場合は、専門店の着物預かりサービスを利用するのも一つの方法です。

和装の知識と経験を重ねることで、一生の宝物として着物を楽しむことができます。卒業式をきっかけに和装に親しみ、日本の伝統文化を自分のライフスタイルに取り入れていくことは、大きな魅力となるでしょう。大学卒業という人生の節目に身につけた和装は、その後の人生の様々な場面で輝きを放ち続けるはずです。

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