道端で弱った子猫を発見した時、多くの人が「助けてあげたい」と感じるでしょう。しかし、感情だけで行動すると後々大きな負担となってしまいます。
捨て猫の保護には医療費が数万円から数十万円かかる場合があり、その後の飼育には15年以上の長期間にわたる責任が伴います。適切な知識と準備なしに保護すると、猫にとっても飼い主にとっても不幸な結果を招く恐れがあります。本記事では保護の判断基準から健康管理、譲渡方法まで実践的な情報をお伝えします。
捨て猫を拾う前に確認すべき重要なポイント

捨て猫を保護する前に、本当にその猫が保護を必要としているのかを冷静に判断する必要があります。見た目だけでは判断できない要素が多く存在するためです。
保護には長期的な責任が伴うため、一時的な感情ではなく現実的な計画を立てることが重要です。医療費や飼育環境の準備、時間の確保など具体的な検討を行ってから行動に移しましょう。
本当に捨て猫なのかを見極める方法
路上にいる猫が必ずしも捨て猫とは限りません。まず猫の状態を慎重に観察することから始めましょう。健康な外猫は警戒心が強く、人間が近づくと素早く逃げていきます。一方で捨て猫や病気の猫は動きが鈍く、人間に対して異常に甘えたり、逆に極度に怯えたりする傾向があります。
首輪の有無を確認することも重要ですが、首輪をしていない猫でも飼い猫である場合があります。近隣住民への聞き込みや、迷い猫の掲示板、動物病院への問い合わせを行ってください。飼い主が必死に探している場合があるためです。
猫の年齢も判断材料となります。生後間もない子猫が単独でいる場合は明らかに人間の介入が必要です。母猫が近くにいる可能性もあるため、少し離れた場所から観察してみてください。成猫の場合は外猫として生活している可能性も考慮しましょう。
一時保護と終生飼育の違いを理解する
一時保護は緊急的に猫の安全を確保し、適切な飼い主を見つけるまでの期間お世話をすることを指します。期間は数週間から数ヶ月程度で、その間に健康管理を行い、信頼できる譲渡先を探します。一方、終生飼育は猫の寿命が尽きるまで責任を持って飼い続けることを意味します。
一時保護を選択する場合でも、最低限の医療費と飼育環境の準備が必要です。動物病院での健康診断、ワクチン接種、寄生虫の駆除など基本的な医療処置には5万円程度かかると考えておきましょう。キャリーケース、食器、トイレ用品、キャットフードなど必要な用品の購入も必要です。
譲渡先が見つからない場合のことも想定しておかなければなりません。保護した時点で、最悪の場合は自分で飼い続ける覚悟を持つことが大切です。無責任な保護は猫を再び不幸にする結果となってしまいます。
飼育にかかる費用と時間を把握する
猫の飼育には初期費用として10万円程度、月々の維持費として5千円から1万円程度が必要です。初期費用には健康診断、ワクチン接種、避妊去勢手術、マイクロチップ装着などの医療費が含まれます。飼育用品として、キャットタワー、爪とぎ、トイレ、食器、キャリーケースなども必要になります。
月々の維持費にはキャットフード代、猫砂代、定期的な健康診断費用などが含まれます。高齢になると医療費が増加し、月2万円以上かかる場合もあります。猫の平均寿命は15年程度のため、総額で200万円以上の費用を覚悟しておく必要があります。
時間的な負担も考慮しましょう。毎日の食事、トイレ掃除、ブラッシングなど基本的なお世話に1日1時間程度必要です。病気の際の通院や、長期外出時のペットホテル手配など、突発的な対応も求められます。
捨て猫を発見した時の適切な対応手順

捨て猫を発見した際は、まず自分と猫の安全を確保することが最優先です。感情的になって無理な行動を取ると、猫を怪我させたり自分が噛まれたりする危険があります。
状況を冷静に判断し、段階的に対応することで適切な保護が可能になります。緊急性の高い場合は迅速な行動が必要ですが、そうでない場合は慎重に計画を立てて進めましょう。
緊急時の応急処置と安全な保護方法
猫が明らかに怪我をしている場合や、生命に危険がある状況では迅速な対応が必要です。交通量の多い道路脇や悪天候下にいる場合は緊急性が高いと判断してください。まず自分の安全を確保し、車の往来に注意しながら猫に近づきます。
保護する際は厚手の手袋やタオルを使用し、直接手で触らないよう注意してください。怪我をした猫は痛みや恐怖で攻撃的になる場合があります。キャリーケースがない場合は、段ボール箱やバスケットなどでも代用できます。底には滑り止めのためタオルを敷いておきましょう。
猫を捕獲する際は、静かに話しかけながらゆっくりと近づくことが重要です。急な動きは猫を驚かせ、逃走や攻撃行動を引き起こします。食べ物で誘導することも有効ですが、消化器官が弱っている場合があるため、水や薄めたミルクが安全です。
意識がない場合や重篤な外傷がある場合は、できるだけ動かさずに獣医師に連絡を取ってください。不適切な移動は症状を悪化させる恐れがあります。
怪我や病気の猫を安全に運ぶ方法
怪我をした猫を運ぶ際は、症状を悪化させないよう細心の注意が必要です。骨折の疑いがある場合は、できるだけ体勢を変えずに平らな板状のものに載せて運びます。段ボールの底を補強したものでも代用可能です。内出血や脊椎損傷の可能性もあるため、無理に抱き上げることは避けてください。
外傷からの出血がある場合は、清潔なタオルやガーゼで軽く押さえて止血を試みます。強く圧迫すると痛みを与えるため、出血量と猫の反応を見ながら調整してください。呼吸が浅い場合は気道を確保し、頭を少し高くして運びます。
運搬中は猫を刺激しないよう、静かで暗い環境を保ってください。キャリーケースにはタオルをかけて外部の刺激を遮断します。車内では急ブレーキや急カーブを避け、できるだけ滑らかな運転を心がけましょう。運搬時間が長くなる場合は、途中で猫の状態を確認しますが、頻繁に覗くことは避けてください。
動物病院への連絡と搬送のタイミング
保護した猫に明らかな外傷や体調不良の兆候がある場合は、即座に動物病院に連絡を取ってください。夜間や休日の場合は緊急診療を行っている病院を探します。電話では猫の状態、保護した状況、到着予定時刻を正確に伝えましょう。
緊急性が低い場合でも、保護から24時間以内には健康診断を受けることをお勧めします。外見上は健康に見えても、内部疾患や感染症を患っている場合があるためです。特に子猫は体調の変化が急激で、数時間で重篤な状態になることもあります。
病院に向かう前に、保護した時間、場所、猫の行動などをメモしておいてください。獣医師にとって重要な診断材料となります。他に動物を飼っている場合は、感染症予防のため隔離が必要か確認しましょう。
保護後すぐに行うべき基本的なケア
保護直後の猫は極度のストレス状態にあるため、静かで安全な環境を提供することが最優先です。急激な環境変化は猫の体調を悪化させる恐れがあります。まず小さな部屋や大きめのケージで一時的に隔離し、外部の刺激を最小限に抑えてください。
水と少量の食べ物を用意しますが、無理に食べさせる必要はありません。脱水症状の確認のため、首の後ろの皮膚をつまんで離した際の戻り方を観察してください。皮膚がゆっくり戻る場合は脱水の可能性があります。
トイレ環境も重要です。猫砂がない場合は新聞紙やペットシーツでも代用できます。排尿や排便の有無、状態を記録しておくと獣医師への報告に役立ちます。初日は猫の様子を静かに観察し、急激な変化があれば即座に獣医師に相談してください。
健康状態のチェックポイント
保護した猫の健康状態を把握するため、以下の項目を定期的にチェックしてください。体温は耳の内側や肉球で大まかに判断できます。正常な体温は38度から39度程度で、触れると温かく感じる程度です。異常に熱い場合や冷たい場合は体温調節機能に問題がある可能性があります。
呼吸の様子も重要な指標です。安静時の呼吸数は1分間に20回から30回程度が正常範囲です。口を開けて息をしている場合や、呼吸が浅く早い場合は呼吸器系の問題が疑われます。鼻水や涙、よだれの有無も確認してください。
食欲と水分摂取量の記録も大切です。保護直後は警戒心から食べない場合もありますが、24時間以上全く口にしない場合は注意が必要です。排泄物の色、量、回数も健康状態を知る手がかりとなります。血便や下痢、逆に便秘が続く場合は消化器系の問題が考えられます。
一時的な住環境の整備方法
保護した猫のための一時的な住環境は、安全性と快適性を両立させることが重要です。他の動物と隔離できる部屋があれば理想的ですが、ない場合は大型のケージやサークルでも対応できます。床面積は猫が立ち上がって数歩歩ける程度の広さが最低限必要です。
必要な設備として、食器、水入れ、トイレ、休憩場所を配置します。食器と水入れはプラスチック製よりも陶器やステンレス製が衛生的です。トイレは食事場所から離した位置に設置し、猫砂は無香料のものを選んでください。休憩場所にはタオルや毛布を敷いて保温に配慮します。
室温は22度から26度程度に保ち、直射日光や冷暖房の風が直接当たらない場所を選びます。子猫の場合は体温調節機能が未発達のため、湯たんぽやペット用ヒーターで保温することも必要です。騒音を避け、人の出入りが少ない静かな環境を整えてください。
捨て猫の健康管理と医療費について

捨て猫の健康管理には通常の飼い猫以上の注意が必要です。栄養不良や寄生虫感染、外傷など様々な健康問題を抱えている場合が多いためです。
適切な医療処置を受けることで多くの問題は解決できますが、費用は数万円から数十万円に及ぶ場合もあります。事前に費用の目安を把握し、治療方針を獣医師と相談することが重要です。
動物病院での必要な検査と治療内容
保護した猫が動物病院で受ける基本的な検査には、身体検査、血液検査、便検査、ウイルス検査が含まれます。身体検査では体重測定、体温測定、心音・呼吸音の聴診、口腔内や皮膚の状態確認を行います。これらの検査により猫の基本的な健康状態を把握できます。
血液検査では貧血、栄養状態、肝機能、腎機能などを調べます。捨て猫は栄養不良による貧血や、ストレスによる免疫力低下を起こしている場合が多く見られます。便検査では寄生虫の有無を確認し、必要に応じて駆虫薬を投与します。
ウイルス検査では猫エイズ、猫白血病などの感染症の有無を調べます。これらの検査結果により今後の治療方針と飼育環境が決まるため、他の猫と接触させる前に必ず実施してください。外傷がある場合はレントゲン検査や超音波検査も追加で行われます。
寄生虫や感染症の検査項目
捨て猫に多く見られる寄生虫には、回虫、条虫、鉤虫、コクシジウムなどがあります。これらの寄生虫は便検査により発見でき、顕微鏡検査で虫卵や原虫を確認します。複数回の検査が必要な場合もあり、初回で陰性でも1週間後に再検査を行うことが一般的です。
ノミやダニなどの外部寄生虫も深刻な問題となります。肉眼でも確認できますが、ノミの糞や卵は見つけにくい場合があります。皮膚の炎症や脱毛、かゆみの症状から判断することもあります。マダニが付着している場合は無理に取り除かず、獣医師に任せてください。
感染症検査では、猫カリシウイルス、猫ヘルペスウイルス、猫パルボウイルスなどの一般的な感染症に加えて、猫エイズウイルス(FIV)、猫白血病ウイルス(FeLV)の検査も重要です。これらのウイルス感染は治療法が限定されるため、早期発見が予後を左右します。
ワクチン接種のスケジュール
捨て猫のワクチン接種は健康状態を確認してから行います。体調不良や栄養不良の状態でのワクチン接種は副作用のリスクが高まるためです。一般的には保護から1週間程度経過し、体調が安定してから初回接種を行います。子猫の場合は生後8週齢以降が接種の目安となります。
基本的なワクチンには3種混合(猫ヘルペス、猫カリシ、猫パルボ)または5種混合(上記に猫白血病、猫クラミジアを追加)があります。室内飼育予定の場合は3種混合で十分ですが、外に出る可能性がある場合は5種混合を推奨します。狂犬病ワクチンは日本では義務ではありませんが、海外渡航の予定がある場合は必要です。
初回接種から3週間から4週間後に2回目の接種を行い、その後は年1回の追加接種が基本となります。子猫の場合は母親からの移行抗体の影響を考慮し、3回接種する場合もあります。接種後は体調変化に注意し、異常があれば即座に病院に連絡してください。
医療費の目安と費用を抑える方法
捨て猫の医療費は健康状態により大きく異なりますが、基本的な検査と処置で5万円から10万円程度を見込んでおく必要があります。重篤な疾患や外傷がある場合は20万円以上かかることもあります。
費用を抑える方法として、複数の動物病院で見積もりを取ることや、自治体の助成制度を活用することが挙げられます。治療の優先順位を獣医師と相談し、緊急性の高いものから順次対応することも重要です。
治療費の相場と病院選びのコツ
動物病院の治療費は自由診療のため、病院により大きな差があります。初診料は1500円から3000円、血液検査は5000円から1万円、レントゲン検査は3000円から8000円程度が相場です。手術が必要な場合は避妊去勢手術で3万円から6万円、骨折手術で10万円から30万円程度かかります。
病院選びでは料金だけでなく、獣医師の経験や設備の充実度も考慮してください。夜間や休日の対応可能性、セカンドオピニオンに対する姿勢なども重要な要素です。口コミサイトや知人の紹介を参考にしながら、複数の病院を比較検討しましょう。
治療費の支払い方法についても事前に確認しておくことが大切です。クレジットカード払いや分割払いに対応している病院もあります。ペット保険への加入も検討材料の一つですが、既往症や年齢制限があるため、保護直後の加入は難しい場合があります。
自治体の助成制度や無料診療の活用法
多くの自治体では野良猫や捨て猫の避妊去勢手術に対する助成制度を設けています。助成額は5000円から2万円程度で、申請条件や手続き方法は自治体により異なります。市役所や区役所の環境課、保健所に問い合わせて詳細を確認してください。申請には獣医師の診断書や写真が必要な場合があります。
動物愛護団体や獣医師会が主催する無料診療イベントも定期的に開催されています。これらのイベントでは基本的な健康診断、ワクチン接種、簡単な治療を無料または低価格で受けることができます。開催情報は自治体の広報誌やホームページ、動物病院の掲示板で確認できます。
学生による診療実習を行っている獣医系大学では、一般よりも安価で診療を受けられる場合があります。診療は必ず指導教員の監督下で行われるため、質の面でも安心です。ただし予約が取りにくく、時間がかかる場合があることを理解しておいてください。
捨て猫を飼い続けるか譲渡するかの判断

保護した猫を自分で飼い続けるか、他の飼い主を探すかは重要な判断となります。感情的な決断ではなく、現実的な条件を考慮して決める必要があります。
どちらを選択するにしても、猫の福祉を最優先に考えることが大切です。中途半端な決断は猫を再び不幸にする結果となってしまうため、慎重に検討してください。
自分で飼育する場合の準備と心構え
捨て猫を自分で飼育する場合、通常の飼い猫以上に時間と労力が必要になることを理解しておいてください。トラウマを抱えている場合が多く、人間との信頼関係を築くまでに数ヶ月から数年かかることもあります。過度の甘えや分離不安などの問題行動が現れる場合もあります。
経済的な準備も重要です。月々のフード代、トイレ用品費、定期的な健康診断費用に加えて、病気や怪我の際の治療費も考慮してください。猫の平均寿命は15年程度のため、長期的な費用計画を立てる必要があります。ペット保険への加入も検討しましょう。
住環境の整備では、完全室内飼いが基本となります。脱走防止のため窓や玄関の対策を講じ、誤飲の原因となる小さな物は片付けてください。キャットタワーや爪とぎ、隠れ場所など猫がストレスなく過ごせる環境を作ることが重要です。
猫の基本的な飼育環境の整備
室内飼いの猫には適切な運動スペースと環境エンリッチメントが必要です。最低でも6畳程度の生活空間を確保し、上下運動ができるキャットタワーやキャットウォークを設置してください。高い場所は猫にとって安心できる場所であり、ストレス軽減に効果的です。
トイレ環境は猫の健康管理において重要な要素です。猫の数+1個のトイレを用意し、静かで人の出入りが少ない場所に設置します。猫砂は猫の好みに合わせて選び、毎日清掃して清潔を保ってください。自動給餌器や自動給水器の導入も、規則正しい生活リズムの維持に役立ちます。
安全対策として、電気コードの保護、有毒植物の除去、小物の片付けを徹底してください。窓には落下防止ネットを設置し、ベランダがある場合は脱走防止措置を講じます。緊急時の避難計画も立てておき、キャリーケースやフードの備蓄を準備しておくことが大切です。
初心者が知っておくべき猫の習性
猫は本来単独行動を好む動物で、自分だけのテリトリーを持ちたがります。新しい環境に慣れるまでに時間がかかるため、無理に触ろうとせず猫のペースに合わせることが重要です。隠れ場所を提供し、猫が自分から出てくるまで待ってください。急激な環境変化はストレスの原因となります。
猫の行動には必ず理由があります。爪とぎはマーキングとストレス発散の意味があり、止めさせることはできません。適切な爪とぎを用意し、家具を傷つけられたくない場合は保護シートを使用してください。鳴き声も要求や感情の表現であり、無視するのではなく原因を探ることが大切です。
夜間の活動は猫の自然な行動パターンです。完全に止めさせることはできませんが、日中に十分遊ばせることで夜間の活動を減らすことができます。定期的な食事時間と遊びの時間を設けることで、猫の生活リズムを整えることが可能です。
信頼できる譲渡先を見つける方法
猫の譲渡を検討する場合、信頼できる飼い主を見つけることが最重要課題となります。不適切な飼い主に渡してしまうと、猫が再び捨てられたり虐待されたりする危険があります。
譲渡先の選定では、相手の飼育経験、住環境、家族構成、経済状況などを総合的に判断する必要があります。複数の方法を組み合わせて、より多くの候補者の中から最適な飼い主を選びましょう。
動物病院やペットショップでの里親募集
動物病院での里親募集は比較的安全で効果的な方法です。動物病院を利用する人は動物に対する愛情があり、医療費を負担する意識も高いと考えられます。猫の診療を受けた病院に相談し、待合室への掲示やスタッフからの紹介をお願いしてください。複数の病院に依頼することで選択肢が広がります。
ペットショップでの募集も一定の効果が期待できます。動物を飼いたい人が集まる場所であり、店舗によっては里親募集コーナーを設けているところもあります。ただし、衝動的な判断で申し込む人もいるため、しっかりとした面談を行うことが重要です。
募集の際は猫の写真、年齢、性別、性格、健康状態、必要な条件を明記してください。可愛らしい写真は関心を引きますが、猫の実際の様子がわかる自然な写真も含めることが大切です。連絡先は携帯電話番号よりも、メールアドレスの方が安全です。
ネット譲渡の注意点と安全な取引方法
インターネットでの里親募集は広範囲に情報を発信できる利点がありますが、虐待目的や詐欺目的の接触もあるため十分な注意が必要です。里親募集サイトを利用する場合は、運営会社の信頼性や利用者の身元確認システムを確認してください。個人情報の取り扱いについても事前に確認しましょう。
応募者との最初の連絡はメールやサイト内メッセージで行い、段階的に情報交換を進めてください。住所、職業、家族構成、飼育経験、飼育環境について詳しく聞き取りを行います。返信の内容や速度、質問に対する回答の具体性などから相手の真剣度を判断できます。
実際に会う前に電話での面談を行うことをお勧めします。声のトーンや話し方から人柄をある程度判断でき、猫に対する愛情や知識の深さも確認できます。不自然な質問や曖昧な回答が多い場合は注意が必要です。
個人情報の交換は段階的に行い、最初から詳細な住所を教える必要はありません。最寄り駅や地域名程度から始めて、信頼関係が築けてから具体的な情報を共有してください。金銭の要求や不自然な急かしがある場合は詐欺の可能性があります。
譲渡時に確認すべき条件と書面の取り交わし
譲渡の際は口約束ではなく、必ず書面で条件を確認してください。譲渡契約書には双方の氏名、住所、連絡先、猫の詳細情報、飼育条件、違反時の対応などを明記します。法的拘束力を持たせるため、署名と押印を行い、双方が原本を保管してください。
飼育条件として完全室内飼い、適切な医療の提供、終生飼育、第三者への譲渡禁止などを明記します。避妊去勢手術が未実施の場合は、実施時期と費用負担についても取り決めておいてください。ワクチン接種や定期健診についても合意事項として記載しましょう。
譲渡後の連絡体制も重要です。最初の1ヶ月は週1回、その後は月1回程度の近況報告をお願いし、写真付きのメールや手紙での報告を求めてください。猫の体調不良や問題行動が発生した場合の相談窓口としても機能します。万が一飼育継続が困難になった場合は、必ず元の保護者に連絡することを条件に含めてください。
保護猫特有の問題行動への対処法

保護猫は過去のトラウマや環境変化により、通常の飼い猫とは異なる行動を示すことがあります。これらの行動には必ず原因があり、適切な対応により改善が期待できます。
問題行動を叱責や体罰で解決しようとすると、かえって状況が悪化する場合があります。猫の気持ちを理解し、根気強く向き合うことが重要です。
過度な甘えや分離不安への対応
保護猫に多く見られる過度な甘えや分離不安は、これまでの不安定な生活環境が原因です。飼い主が見えなくなると大声で鳴き続けたり、トイレ以外の場所で粗相をしたりする行動が見られます。また、常に飼い主にくっついて離れようとしない、外出時に破壊行動を行うなどの症状も現れます。
これらの行動を改善するには、まず猫に安心感を与えることが重要です。規則正しい生活リズムを作り、食事や遊びの時間を一定にしてください。猫が予測できる環境を整えることで不安が軽減されます。また、一人でいることに徐々に慣れさせるため、在宅時でも短時間の分離練習を行います。
過度に構いすぎることは依存を強化する原因となります。猫が甘えてきても、こちらのペースで対応し、要求に応じすぎないよう注意してください。猫が一人で過ごせた時間があれば、帰宅時に褒めてあげることで良い行動を強化できます。
適切な距離感を保つしつけ方法
猫との適切な距離感を保つためには、人間がリーダーシップを取ることが重要です。猫の要求にすべて応えるのではなく、人間の都合も考慮した関係性を築いてください。食事の時間、遊びの時間、触れ合いの時間をあらかじめ決めておき、それ以外の時間は猫の要求に応じないようにします。
しつけの基本は一貫性です。家族全員が同じルールで接することで、猫も理解しやすくなります。「ダメ」という言葉と手のジェスチャーを組み合わせて使い、好ましくない行動をした時は毅然とした態度で接してください。大声で叱ったり、体罰を与えたりすることは逆効果となります。
正の強化を積極的に活用しましょう。猫が良い行動をした時は、すぐに褒めたりおやつを与えたりして報酬を提供します。タイミングが重要で、行動の直後に報酬を与えることで学習効果が高まります。猫用のクリッカーを使った訓練も効果的です。
猫が安心できる環境づくりのコツ
猫が安心できる環境を作るためには、猫の本能的な欲求を満たすことが重要です。高い場所に登れるキャットタワーや棚を設置し、見晴らしの良い場所を提供してください。猫は高い場所から周囲を見渡すことで安心感を得られます。また、狭い場所に隠れることも猫の習性なので、段ボール箱やキャットハウスなどの隠れ家も用意しましょう。
音の環境にも配慮が必要です。突然の大きな音は猫のストレスとなるため、テレビの音量や音楽のボリュームは控えめにしてください。来客時には猫が逃げ込める静かな部屋を確保し、無理に引き合わせようとしないことが大切です。
匂いの環境も猫にとって重要な要素です。猫は嗅覚が発達しているため、強い香りの洗剤や芳香剤は避けてください。逆に、猫が安心できる匂いとして、飼い主の匂いが付いた衣類やタオルを猫のベッド近くに置くことは効果的です。フェロモン製品の使用も検討してみてください。
食事や生活習慣の改善方法
保護猫の食事や生活習慣の問題は、過去の経験や健康状態に起因することが多くあります。偏食、過食、異食などの問題が見られる場合は、段階的に正常な食習慣に導く必要があります。無理に変えようとすると、かえってストレスを与える結果となってしまいます。
生活リズムの乱れも保護猫によく見られる問題です。野良猫として生活していた場合、昼夜逆転の生活パターンが身についている場合があります。室内飼いに適応させるため、人間の生活リズムに合わせた環境作りが必要です。
トイレの習慣についても、適切な場所で排泄できるよう根気強く教える必要があります。事故があっても叱らず、正しい場所で排泄できた時に褒めることで学習を促進してください。
市販のキャットフードに慣れさせる方法
手作り食や人間の食べ物に慣れてしまった猫を市販のキャットフードに移行させる場合は、段階的に行うことが重要です。急激な食事の変更は消化器官に負担をかけ、下痢や嘔吐の原因となります。最初は現在の食事に少量のキャットフードを混ぜ、徐々に割合を増やしていってください。
食べムラがある場合は、食事の時間を決めて規則正しく与えることから始めます。食器を出してから30分経っても食べない場合は片付け、次の食事時間まで何も与えません。健康な猫であれば2日程度で食べるようになりますが、子猫や高齢猫、病気の猫の場合は注意が必要です。
フードの種類や形状を変えてみることも効果的です。ドライフードを食べない場合はウェットフードから始め、逆にウェットフードしか食べない場合はお湯でドライフードをふやかして与えてみてください。温めることで香りが強くなり、食欲を刺激することができます。
人間の食事に依存させない工夫
人間の食事を欲しがる猫には、まず人間の食事時間と猫の食事時間を明確に分けることから始めてください。人間が食事をしている間は猫を別の部屋に移すか、猫用の食事を同時に与えて注意をそらします。テーブルに飛び乗ろうとしたら、音の出るものや霧吹きで阻止してください。
人間の食べ物の多くは猫にとって有害であることを理解しておく必要があります。玉ねぎ、ニンニク、チョコレート、ぶどうなどは中毒を起こす可能性があり、塩分の多い食品は腎臓に負担をかけます。猫の健康を守るためにも、人間の食べ物は一切与えないという姿勢を貫いてください。
どうしても食べ物を分けたい場合は、猫用のおやつを利用してください。ただし、おやつは総カロリーの10%以内に抑え、与えすぎないよう注意が必要です。食事の時間以外におやつを要求してきても、決められた時間以外は与えないというルールを徹底してください。