【2025年版】母子家庭の大学無償化条件|年収別支援額と申請の全知識

大学無償化をイメージした黒板と学校のイラスト

お子さんの大学進学を考えているけれど、学費のことで悩んでいませんか?母子家庭にとって大学の費用は本当に大きな負担ですよね。でも安心してください。2020年から始まった大学無償化制度を活用すれば、条件を満たす母子家庭のお子さんは授業料の減免や給付型奨学金を受けられるんです。この記事では、母子家庭が知っておくべき大学無償化の条件から申請方法、実際の支援額まで、わかりやすく丁寧に解説いたします。

この記事でわかること
  • 大学無償化の3つの条件(年収・資産・学力)を母子家庭向けに解説
  • 母子家庭だけの優遇ポイント(資産要件緩和・扶養人数による年収基準)
  • 支援額の目安と申請の流れ(予約採用・在学採用)
条件 支援内容 国公立(自宅) 国公立(一人暮らし) 私立(自宅) 私立(一人暮らし)
住民税非課税世帯 授業料・入学金全額免除+給付型奨学金満額 授業料53.6万円+入学金28.2万円+奨学金45.9万円 授業料53.6万円+入学金28.2万円+奨学金90.9万円 授業料70万円+入学金26万円+奨学金45.9万円 授業料70万円+入学金26万円+奨学金90.9万円
年収300万円未満 授業料等の2/3免除+給付型奨学金2/3 約53万円 約80万円 約63万円 約90万円
年収380万円未満 授業料等の1/3免除+給付型奨学金1/3 約26万円 約40万円 約31万円 約45万円
目次

母子家庭が知るべき大学無償化制度の基本

大学無償化と聞くと「完全に無料になるの?」と思われるかもしれませんが、実際はどのような制度なのでしょうか。母子家庭のお母さんたちからよく「私たちも対象になるの?」「どんな条件があるの?」といったご質問をいただきます。ここでは、まず大学無償化制度の基本的な仕組みについて、母子家庭の視点から詳しくご説明いたします。制度の正式名称や支援内容、2025年から始まる新しい制度との違いも含めて、しっかりと理解していきましょう。

高等教育の修学支援新制度とは何ですか?

大学無償化制度の正式名称は「高等教育の修学支援新制度」といいます。この制度は2020年4月から文部科学省によって開始された制度で、経済的な理由で大学進学が困難なご家庭の学生さんを支援することを目的としています。

制度の内容は大きく2つの支援に分かれています。1つ目は「授業料・入学金の減免」です。これは大学に直接支払う授業料や入学金が免除または減額される制度です。2つ目は「給付型奨学金の支給」で、これは返済不要のお金が毎月支給される制度です。

支援の対象となるのは大学、短期大学、高等専門学校、専門学校です。国公立だけでなく私立の学校も対象になりますので、お子さんの進路選択の幅が広がりますね。支援額は世帯の収入や進学先の学校種別によって決まります。住民税非課税世帯であれば満額の支援を受けることができ、それに準ずる世帯でも3分の2または3分の1の支援を受けられます。

母子家庭だけで対象になるわけではありません

「母子家庭だから自動的に大学無償化の対象になる」と思われている方もいらっしゃいますが、実はそうではありません。母子家庭であることは確かに有利な条件の一つですが、それだけで対象になるわけではないんです。

この制度では、まず世帯の収入が基準を満たしている必要があります。具体的には住民税非課税世帯、またはそれに準ずる世帯が対象となります。母子家庭の場合、多くのご家庭がこの収入基準を満たしやすい状況にありますが、必ず確認が必要です。

ただし、母子家庭には「資産要件の緩和措置」があります。一般的な世帯では資産が2000万円未満である必要がありますが、母子家庭(生計維持者が1人の世帯)では1250万円未満まで緩和されています。これは母子家庭の経済状況を考慮した配慮なんです。

2025年からの多子世帯向け制度との違い

2025年から新たに「多子世帯の大学等授業料・入学金の無償化」という制度が始まります。この制度は子ども3人以上を扶養している世帯が対象で、世帯年収に関係なく支援を受けられるという画期的な制度です。

母子家庭で3人以上のお子さんがいらっしゃる場合は、この新制度の対象になる可能性があります。現行の制度とは異なり、所得制限がありませんので、比較的年収が高い母子家庭でも利用できるのが特徴です。

ただし、新制度では給付型奨学金の支給はありません。授業料と入学金の減免のみとなります。また、減免額にも上限が設定されているため、実際の学費が支援額を上回る場合は差額を支払う必要があります。母子家庭の場合は、現行制度と新制度のどちらが有利かを比較検討することが大切ですね。

母子家庭が大学無償化を受けるための3つの条件

大学無償化制度を利用するには、3つの主要な条件をクリアする必要があります。これらの条件は母子家庭にとって決して厳しいものではありませんが、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。条件を満たしているかどうかで支援の内容が大きく変わってきますので、一つずつ詳しく見ていきましょう。特に母子家庭の場合は、一般的な世帯とは異なる特別な配慮もありますので、そのポイントもお伝えいたします。

世帯年収の条件【住民税非課税世帯が基本】

大学無償化制度の最も重要な条件が世帯年収です。基本的には住民税非課税世帯、またはそれに準ずる世帯が対象となります。母子家庭の場合、どのような年収であれば対象になるのでしょうか。

住民税非課税世帯とは、前年の合計所得金額が一定額以下で住民税が課税されていない世帯のことです。母子家庭で扶養親族が1人(お子さん1人)の場合、年収約270万円以下が目安となります。扶養親族が増えれば、この基準額も上がります。

住民税非課税世帯に該当しない場合でも、年収約300万円未満であれば3分の2の支援、年収約380万円未満であれば3分の1の支援を受けることができます。これらの金額は母子家庭(扶養親族1人)の場合の目安ですので、お子さんの人数によって変わることも覚えておいてくださいね。

母子家庭の年収270万円以下が目安

母子家庭で扶養するお子さんが1人の場合、年収270万円以下であれば住民税非課税世帯として満額の支援を受けられます。この270万円という金額は、給与収入での金額です。パートやアルバイトでの収入も含まれますが、非課税の手当(児童扶養手当など)は含まれません。

年収の計算は前年の1月から12月までの収入で判定されます。例えば2025年4月に大学に入学する場合は、2023年の年収で判定されることになります。離婚後間もない場合は、離婚前の世帯年収ではなく、母子家庭になってからの年収で判定されますので安心してください。

扶養するお子さんが2人の場合は年収約320万円以下、3人の場合は約370万円以下が住民税非課税の目安となります。お子さんの人数が多いほど基準額が上がるのは、生活費がかかることを考慮した制度設計になっているからです。ご自身の世帯がどの基準に該当するか、市役所の税務課などで確認することをお勧めします。

養育費や児童扶養手当は収入に含まれる?

母子家庭のお母さんからよく質問されるのが「元夫からの養育費は収入に含まれるのか」ということです。この点について詳しく説明いたします。

養育費については、税法上は収入に含まれません。つまり、月5万円の養育費をもらっていても、それは年収の計算には入らないということです。これは母子家庭にとって有利な点ですね。児童扶養手当についても同様で、これらの手当は非課税所得となりますので、年収の計算には含まれません。

ただし、注意が必要なのは、お子さんがアルバイトをしている場合です。学生であっても、年間103万円を超える収入があると所得税が課税され、130万円を超えると扶養から外れる可能性があります。大学無償化の判定では、学生本人の収入も世帯収入に含まれますので、アルバイト収入が多い場合は事前に確認が必要です。特に高校3年生でアルバイトをしている場合は、収入額を調整することも検討してください。

資産条件【母子家庭は緩和措置あり】

大学無償化制度では、収入だけでなく資産についても条件があります。これは「本当に経済的に困窮している世帯かどうか」を判断するためです。母子家庭には特別な配慮がありますので、詳しく見ていきましょう。

資産とは、預貯金や有価証券、投資信託などの金融資産のことを指します。不動産(自宅など)は含まれませんので安心してください。また、学資保険の解約返戻金や個人年金なども資産に含まれる場合がありますので、注意が必要です。

一般的な世帯では資産が2000万円未満である必要がありますが、母子家庭(生計維持者が1人の世帯)では1250万円未満まで緩和されています。これは母子家庭の経済状況を考慮した特別な配慮です。ほとんどの母子家庭では、この資産条件を満たしていると思われます。

一般世帯は2000万円未満、母子家庭は1250万円未満

母子家庭の資産上限が1250万円未満に設定されているのは、将来への不安から貯蓄をしている母子家庭の実情を考慮したものです。お子さんの教育費や自分の老後資金など、様々な心配から貯蓄に励んでいるお母さんも多いでしょう。

資産の計算方法ですが、学生本人と生計維持者(お母さん)の資産を合計します。普通預金、定期預金、投資信託、株式などが主な対象となります。生命保険については、解約返戻金がある場合はその金額が資産に含まれます。学資保険も同様です。

資産の確認は、通帳のコピーや残高証明書などで行います。申請時点での残高が基準となりますので、申請直前に大きな支出があった場合などは、その経緯を説明できるようにしておくとよいでしょう。また、お子さん名義の口座がある場合も忘れずに申告してください。お年玉や児童手当を貯めた口座などがある場合は、それも資産として計算されます。

学力条件【高校の成績と進学後の維持】

大学無償化制度では、経済的な支援を受けるだけでなく、学習に対する意欲も求められます。ただし、この学力条件は決して厳しいものではありません。特に住民税非課税世帯には緩和措置もありますので、安心してください。

高校卒業時点での条件と、大学進学後の維持条件の2つがあります。高校卒業時点では、評定平均値が3.5以上であることが基本的な条件ですが、住民税非課税世帯の場合は、レポートの提出で代替できる場合もあります。

大学進学後は、毎年度末に適格認定という審査があります。ここで学習状況や成績を確認され、基準を満たしていれば翌年度も支援が継続されます。単位の修得状況やGPAなどが判定基準となりますので、お子さんには真剣に学習に取り組んでもらう必要があります。

評定平均3.5以上または住民税非課税世帯の緩和措置

高校での評定平均値3.5以上という条件は、5段階評価で平均して3.5以上ということです。これは決して厳しい条件ではありませんが、お子さんがこの基準を満たしていない場合でも、住民税非課税世帯であれば別の方法があります。

住民税非課税世帯の場合は、評定平均値の代わりに「学修意欲等に関するレポート」を提出することで条件をクリアできます。このレポートには、なぜ大学で学びたいのか、将来どのような目標を持っているのかなどを記載します。経済的に厳しい状況でも学習への意欲があることを示すものです。

また、高校を卒業してから時間が経っている場合や、高校を中退して高等学校卒業程度認定試験(旧大検)を受けた場合でも、条件を満たせば支援の対象となります。人生には様々な事情がありますが、学ぶ意欲があれば道は開かれているということですね。お子さんの状況に応じて、最適な方法を選択してください。

母子家庭が受けられる支援額の詳細

実際にどのくらいの支援が受けられるのか、具体的な金額を知りたいですよね。支援額は進学先の学校種別(国公立か私立か)や通学方法(自宅通学か一人暮らしか)によって異なります。母子家庭の多くが対象となる住民税非課税世帯の場合の満額支援について、詳しくご説明いたします。授業料・入学金の減免と給付型奨学金を合わせると、かなりの負担軽減になることがお分かりいただけると思います。お子さんの進路選択の参考にしてください。

授業料・入学金の減免について

大学無償化制度の大きなメリットの一つが、授業料と入学金の減免です。これは大学に直接支払う費用が免除または減額される制度で、家計への負担軽減効果は非常に大きいものがあります。

減免の対象となるのは、文部科学省の確認を受けた大学・短期大学・高等専門学校・専門学校です。現在、大学・短期大学の98.1%、高等専門学校の100%、専門学校の78.5%が対象となっています。ほとんどの学校が対象になっていますが、お子さんが志望する学校が対象かどうかは事前に確認しておきましょう。

減免額には上限が設定されており、国公立と私立で金額が異なります。実際の授業料や入学金が減免額の上限を下回る場合は全額免除となりますが、上限を上回る場合は差額を自己負担する必要があります。私立大学の中には授業料が高額な学校もありますので、志望校選択の際は実際の負担額も考慮することが大切です。

国立大学:年間約54万円+入学金約28万円

国立大学の場合、授業料の減免上限額は年間535,800円、入学金の減免上限額は282,000円となっています。現在の国立大学の標準的な授業料と入学金がちょうどこの金額に設定されていますので、住民税非課税世帯の場合は実質的に授業料と入学金が全額免除となります。

4年間で計算すると、授業料だけで約214万円、入学金と合わせると約242万円の負担軽減となります。これは母子家庭にとって非常に大きな支援ですね。国立大学は元々学費が比較的安いこともあり、この制度を活用すれば経済的な負担を大幅に軽減できます。

ただし、国立大学であっても一部の学部(医学部など)では、実習費や設備費などが別途必要になる場合があります。これらの費用は減免の対象外となりますので、志望学部の費用については事前に詳しく調べておくことをお勧めします。また、教科書代や実習用具代なども別途必要になりますので、これらの費用も含めて進学資金を考えておきましょう。

私立大学:年間約70万円+入学金約26万円

私立大学の場合、授業料の減免上限額は年間700,000円、入学金の減免上限額は260,000円となっています。私立大学は学校によって授業料に大きな差がありますが、多くの私立大学でこの上限額でかなりの負担軽減が期待できます。

私立大学の平均的な授業料は年間90万円程度ですので、減免を受けても年間20万円程度の負担は残ることが多いでしょう。しかし、それでも4年間で280万円の負担軽減となりますので、非常に大きな支援です。入学金についても、多くの私立大学で上限額の範囲内に収まります。

私立大学を選択する場合は、実際の授業料と減免上限額の差額を事前に計算しておくことが重要です。学部によっても授業料が異なりますし、医学部や薬学部などでは授業料が非常に高額になる場合もあります。志望校が決まったら、その学校の学費と減免額を比較して、実際の負担額を把握しておきましょう。

給付型奨学金について

授業料・入学金の減免に加えて、返済不要の給付型奨学金も支給されます。この奨学金は生活費や学習費に充てることができ、特に一人暮らしをする学生にとっては大きな支援となります。支給額は通学形態によって異なります。

給付型奨学金は毎月振り込まれます。原則として学生本人名義の口座に振り込まれますが、未成年の場合は保護者名義の口座でも可能です。振込日は毎月11日(土日祝日の場合は翌営業日)となっています。

この奨学金は生活費の補助という性格が強いため、アルバイトとの兼ね合いも考える必要があります。給付を受けながらアルバイトをすることは可能ですが、アルバイト収入が多すぎると翌年度の給付に影響する場合もありますので、適度な範囲に留めることが大切です。

自宅通学:月額約3.8万円(年間約46万円)

自宅から通学する場合の給付型奨学金は、住民税非課税世帯で月額38,300円(年額459,600円)となります。これは交通費や昼食代、教科書代、サークル活動費などの学習・生活費を支援するためのものです。

4年間で計算すると約184万円の支給となります。授業料・入学金の減免と合わせると、国立大学であれば426万円、私立大学でも444万円の支援を受けることができます。これだけの支援があれば、母子家庭でも安心してお子さんを大学に送り出すことができますね。

自宅通学の場合でも、交通費がかかる場合があります。特に地方では通学に1時間以上かかることも珍しくありません。この奨学金は、そうした通学にかかる費用も含めて支援することを想定しています。また、大学生になると高校時代よりも教科書代や資料代がかかることが多いので、これらの費用にも活用できます。

自宅外通学:月額約7.5万円(年間約91万円)

自宅外から通学する場合(一人暮らしの場合)の給付型奨学金は、住民税非課税世帯で月額75,800円(年額909,600円)となります。これは家賃や光熱費、食費などの生活費を支援するためのもので、自宅通学の場合の約2倍の金額となっています。

4年間で計算すると約364万円の支給となります。授業料・入学金の減免と合わせると、国立大学で606万円、私立大学で624万円という非常に手厚い支援を受けることができます。一人暮らしの場合、家賃だけでも月3~5万円程度はかかりますので、この奨学金があることで経済的な負担が大幅に軽減されます。

一人暮らしをする場合は、奨学金だけで全ての生活費を賄うのは難しいかもしれませんが、アルバイトと組み合わせることで十分に生活していくことができるでしょう。ただし、アルバイトのしすぎで学業がおろそかになっては本末転倒ですので、学習と生活のバランスを取ることが大切です。

【時期別】申請手続きの完全ガイド

大学無償化制度の申請には、主に2つのタイミングがあります。高校3年生で申し込む「予約採用」と、大学入学後に申し込む「在学採用」です。どちらのタイミングで申請するかは、お子さんの状況や準備状況によって決めることができます。早めに申請することで安心して受験に臨めますし、入学後の手続きもスムーズになります。ここでは、それぞれの申請方法について、必要書類や注意点も含めて詳しく解説いたします。適切なタイミングで申請できるよう、しっかりと準備していきましょう。

高校3年生の予約採用【おすすめ】

予約採用は、高校3年生の時に予め申し込んでおく制度です。大学進学前に支援が受けられるかどうかがわかるため、安心して受験勉強に集中できるのが最大のメリットです。また、大学入学後の手続きも簡素化されるため、新生活の準備に時間を使えます。

予約採用で採用された場合、大学入学後に「進学届」を提出するだけで支援が開始されます。万が一、第一志望の大学に合格できなかった場合でも、対象校であれば他の大学でも支援を受けることができます。浪人した場合は、高校卒業から2年以内であれば権利を保持できますので安心です。

申請は在学中の高校を通じて行います。高校の進路指導の先生や奨学金担当の先生に相談しながら手続きを進めることができますので、書類の記入ミスなども防げます。母子家庭の場合は、必要書類も比較的シンプルですので、早めに準備を始めれば十分に間に合います。

4月下旬~7月頃の申請スケジュール

予約採用の申請期間は、毎年4月下旬から7月頃までです。具体的な期間は年度によって多少異なりますが、おおむね3か月程度の申請期間が設けられています。高校3年生になったら、すぐに担任の先生や進路指導の先生に相談することをお勧めします。

申請のスケジュールは以下のような流れになります。4月下旬に高校で説明会が開催され、申請希望者に申込書類が配布されます。5月中旬頃までに必要書類を揃えて高校に提出します。高校が書類をとりまとめて日本学生支援機構に送付し、秋頃に採用結果が通知されます。

母子家庭の場合は、所得証明書や住民票などの書類を市役所で取得する必要があります。これらの書類は有効期限がありますので、申請時期に合わせて取得することが大切です。また、離婚が成立したばかりの場合は、戸籍謄本なども必要になる場合がありますので、早めに確認しておきましょう。特に申請期限間際は市役所も混雑しますので、余裕を持って書類を準備してください。

高校の奨学金担当窓口での手続き

予約採用の申請は、必ず在学中の高校を通じて行います。多くの高校では、進路指導部や教務部に奨学金担当の先生がいらっしゃいます。まずは担任の先生に相談して、奨学金担当の先生を紹介してもらいましょう。

高校の先生方は毎年多くの生徒の奨学金申請をサポートしていますので、手続きに関する豊富な経験をお持ちです。書類の記入方法や必要書類の準備について、丁寧に指導してくださいます。母子家庭特有の注意点についても、きっと適切なアドバイスをしてくださるでしょう。

申請書類は高校で一括して管理されます。個人で直接日本学生支援機構に申請することはできませんので、必ず高校を通じて手続きを行ってください。また、高校によっては独自の推薦基準を設けている場合もありますので、早めに相談することが重要です。成績や生活態度なども考慮される場合がありますから、日頃からしっかりと学校生活を送ることも大切ですね。

大学入学後の在学採用

在学採用は、大学に入学してから申請する制度です。予約採用を申請しなかった場合や、予約採用で不採用になった場合でも、在学採用で再チャレンジできます。また、大学入学後に家計状況が変化した場合にも利用できる制度です。

在学採用の場合は、大学の学生支援課や学生課などの窓口で手続きを行います。大学によって担当部署の名称は異なりますが、新入生オリエンテーションで案内がありますので確認してください。申請時期は大学によって多少異なりますが、一般的には春学期と秋学期の年2回申請機会があります。

在学採用のメリットは、大学での学習状況も考慮されることです。高校時代の成績が今ひとつだった場合でも、大学での頑張りが評価される可能性があります。また、予約採用で不採用になった場合でも、大学での成績や学習意欲を示すことで採用される場合もあります。

春学期(4~5月)と秋学期(9~10月)の申請

在学採用の申請は、多くの大学で春学期(4~5月)と秋学期(9~10月)の年2回実施されています。新入生の場合は春学期の申請が一般的ですが、秋学期でも申請可能です。ただし、春学期で申請した方が支援開始時期が早くなるため、経済的なメリットは大きいでしょう。

春学期の申請スケジュールは、4月の新入生オリエンテーションで説明があり、4月中旬から5月中旬頃までが申請期間となることが多いです。この時期は新生活の準備で忙しい時期ですが、重要な手続きですので見逃さないよう注意してください。

秋学期の申請は、9月下旬から10月中旬頃が一般的です。春学期で申請しなかった場合や、家計状況が変化した場合に利用できます。ただし、秋学期の申請で採用された場合、支援開始は10月からとなり、4月から9月分の支援は受けられませんので注意が必要です。できる限り春学期での申請をお勧めします。

大学の学生支援課での手続き

在学採用の手続きは、大学の学生支援課や学生課などで行います。大学によって部署名は異なりますが、奨学金に関する業務を担当している部署があります。新入生オリエンテーションでは、必ずこれらの部署の紹介がありますので、しっかりと確認しておきましょう。

大学の職員の方々も、学生の経済的な支援について豊富な知識をお持ちです。申請書類の記入方法や、母子家庭の場合の注意点についても詳しく教えてくださいます。分からないことがあれば、遠慮なく相談してください。

手続きの流れは、まず学生支援課で申請書類を受け取り、必要事項を記入して必要書類とともに提出します。大学が書類を確認後、日本学生支援機構に送付されます。その後、審査が行われ、採用結果が通知されます。書類に不備があると審査が遅れる場合がありますので、提出前によく確認することが大切です。

申請時の必要書類(母子家庭の場合)
  • 申請書(学校で配布)
  • 住民票(世帯全員分、続柄記載)
  • 課税証明書または非課税証明書
  • 通帳のコピー(残高確認用)
  • 戸籍謄本(離婚の記載があるもの)

母子家庭が申請で失敗しないための注意点

大学無償化制度の申請では、書類の不備や期限切れなどで不採用になってしまうケースがあります。特に母子家庭の場合は、普段お仕事で忙しく、手続きに時間を割くのが難しいこともあるでしょう。しかし、この制度はお子さんの将来にとって非常に重要な支援ですので、失敗は避けたいものです。ここでは、申請で失敗しないために注意すべきポイントを詳しく解説いたします。事前に準備すべきことや確認事項を把握して、確実に申請を成功させましょう。

必要書類の準備【早めの準備が重要】

申請に必要な書類は多岐にわたり、市役所や税務署などで取得する必要があるものも含まれています。これらの書類には有効期限があるものも多く、適切なタイミングで取得することが重要です。

母子家庭の場合、特に注意が必要なのは「生計維持者」の確認です。離婚後間もない場合は、戸籍謄本で離婚の事実を証明する必要があります。また、養育費を受け取っている場合は、その金額や支払い状況を証明する書類が求められる場合もあります。

書類の取得には時間がかかる場合もありますし、平日の昼間しか開いていない役所もあります。お仕事をしながらこれらの書類を揃えるのは大変ですが、お子さんの将来のために頑張って準備しましょう。代理人による取得が可能な書類もありますので、詳しくは各役所にお問い合わせください。

住民票、課税証明書、通帳のコピーなど

申請に必要な主要書類について、詳しく説明いたします。住民票は世帯全員分が必要で、続柄が記載されたものを取得してください。母子家庭であることを証明するために、世帯主と扶養関係が明確に分かるものが必要です。

課税証明書または非課税証明書は、前年の所得を証明するものです。住民税非課税世帯であることを証明するためには非課税証明書が必要ですが、課税されている場合は課税証明書で所得額を確認します。これらの書類は市役所の税務課で取得できます。

通帳のコピーは資産要件を確認するためのものです。申請者(学生)と生計維持者(お母さん)の両方の通帳が必要です。残高が分かるページをコピーして提出します。複数の金融機関に口座がある場合は、すべての口座の通帳コピーが必要ですので注意してください。学資保険や定期預金がある場合は、それらの証明書も必要になります。

対象外の大学・学部もある

大学無償化制度は、文部科学省の確認を受けた大学・学部のみが対象となります。ほとんどの大学が対象となっていますが、一部対象外の学校もありますので、事前の確認が必要です。

特に注意が必要なのは、新設の大学や学部です。制度開始時に要件を満たしていても、その後の実績によっては対象から外れる場合もあります。また、海外の大学や通信制の大学の中には対象外のものもあります。

お子さんが志望する大学が対象かどうかは、文部科学省のホームページで確認できます。また、大学の学生支援課に直接問い合わせることも可能です。志望校選びの段階で、この点も考慮に入れることをお勧めします。

文部科学省認定校の確認方法

対象校の確認は、文部科学省の公式ホームページ「高等教育の修学支援新制度」のページで行えます。「対象機関リスト」から、都道府県別に対象となる大学・短期大学・高等専門学校・専門学校の一覧を確認できます。

リストには学校名だけでなく、対象となる学部・学科も記載されています。同じ大学でも、学部によって対象・対象外が分かれている場合もありますので、お子さんが希望する学部・学科が含まれているかを必ず確認してください。

また、新たに対象となる学校や、逆に対象から外れる学校もありますので、受験年度の最新情報を確認することが大切です。対象校リストは年度ごとに更新されますので、受験シーズンには必ず最新版をチェックしましょう。不明な点があれば、志望校の入試課や学生支援課に直接問い合わせることをお勧めします。

他の奨学金との併用ルール

大学無償化制度は、他の奨学金制度との併用に一定のルールがあります。特に日本学生支援機構(JASSO)の貸与型奨学金との併用では、調整が行われる場合がありますので注意が必要です。

給付型奨学金については、大学無償化制度と他の給付型奨学金を重複して受給することは基本的にできません。ただし、大学独自の奨学金や地方自治体の奨学金の中には併用可能なものもありますので、個別に確認が必要です。

貸与型奨学金については併用可能ですが、大学無償化制度を利用することで、借りられる金額が調整される場合があります。これは過度な支援を避けるための措置ですが、結果として返済負担が軽減されるメリットもあります。

JASSO無利子奨学金は減額される

大学無償化制度の給付型奨学金を受給する場合、JASSO の第一種奨学金(無利子)の貸与月額が調整されます。これは同じ機関から重複して支援を受けることを避けるための措置です。

具体的には、給付型奨学金の月額と第一種奨学金の月額を合計して、一定の上限額を超えないよう調整されます。例えば、自宅通学で給付型奨学金を月額38,300円受給する場合、第一種奨学金は本来の貸与額から調整された金額となります。

ただし、第二種奨学金(有利子)については調整されませんので、必要に応じて併用することができます。母子家庭の場合は、まず返済不要の給付型奨学金を最大限活用し、足りない分については第二種奨学金で補うという考え方が良いでしょう。将来の返済負担を考えると、借りる金額は必要最小限に留めることをお勧めします。

大学無償化が使えない場合の代替手段

大学無償化制度の条件を満たさない場合や、さらなる支援が必要な場合には、他の支援制度も活用できます。母子家庭向けの特別な制度から、一般的な奨学金制度まで、様々な選択肢があります。一つの制度だけに頼るのではなく、複数の制度を組み合わせることで、必要な教育資金を確保することも可能です。ここでは、大学無償化制度以外の主要な支援制度について詳しくご紹介いたします。お子さんの将来のために、すべての可能性を検討してみましょう。

母子父子寡婦福祉資金【無利子または低利】

母子父子寡婦福祉資金は、母子家庭・父子家庭・寡婦を対象とした貸付制度で、子どもの修学資金や就学支度資金を無利子または低利で借りることができます。この制度は都道府県が実施しており、大学無償化制度と併用することも可能です。

修学資金は、大学等に就学させるための授業料、書籍代、交通費などに使える資金です。国公立大学であれば月額67,500円、私立大学であれば月額81,000円まで借りることができます。修学期間中は無利子で、卒業後20年以内に返済すればよいという非常に有利な条件です。

就学支度資金は、入学に際して必要な資金で、国公立大学で410,000円、私立大学で590,000円まで借りることができます。入学金や入学に必要な被服費などに使用できます。こちらも無利子で、卒業後20年以内の返済となります。

各都道府県の母子家庭向け奨学金

各都道府県や市町村では、独自の奨学金制度を設けているところが多くあります。これらの制度は地域の実情に応じて設計されており、国の制度では対応できない細かなニーズに応えることができます。

例えば、東京都では「受験生チャレンジ支援貸付事業」があり、高校3年生の受験費用や高校入学時の費用を無利子で貸し付けています。合格した場合は返済が免除される制度もあります。また、各市町村でも独自の支援制度を設けているところが多くあります。

これらの制度を利用するには、お住まいの都道府県や市町村の福祉担当窓口に相談することが必要です。制度の内容や申請時期は自治体によって異なりますので、早めに情報収集を始めることをお勧めします。

大学独自の特待生制度・給付型奨学金

多くの大学では、独自の特待生制度や給付型奨学金制度を設けています。これらの制度は大学によって内容が大きく異なりますが、学業成績や経済状況に応じて学費の減免や奨学金の支給を行っています。

特待生制度では、入学試験の成績上位者に対して学費の全額または一部を免除する制度が一般的です。継続の条件として一定の成績を維持する必要がありますが、経済的な負担を大幅に軽減できます。

給付型奨学金では、家計の経済状況を考慮して支援を行う制度が多くあります。母子家庭であることが有利に働く場合もありますので、志望校の制度について詳しく調べてみることをお勧めします。

制度名対象支援内容返済
高等教育の修学支援新制度住民税非課税世帯等授業料減免+給付型奨学金不要
母子父子寡婦福祉資金母子家庭等修学資金・就学支度資金無利子20年返済
JASSO第一種奨学金学力・家計基準あり月額貸与無利子返済
JASSO第二種奨学金第一種より緩い基準月額貸与有利子返済
大学独自奨学金大学により異なる学費減免・給付等大学により異なる

母子家庭の大学費用シミュレーション

実際に母子家庭の状況に応じて、どのくらいの支援が受けられるのか、具体的な数字で見てみましょう。年収や家族構成によって支援額が変わりますので、ご自身の状況に近いケースを参考にしてください。ここでは代表的な3つのケースについて、受けられる支援の内容と実際の負担額をシミュレーションいたします。お子さんの進路選択や家計計画の参考にしていただければと思います。なお、金額は住民税非課税世帯の満額支援の場合で計算しています。

年収200万円の母子家庭の場合

年収200万円で扶養するお子さんが1人の母子家庭は、確実に住民税非課税世帯となり、大学無償化制度の満額支援を受けることができます。この場合、国立大学であれば学費に関する負担はほぼゼロになります。

国立大学・自宅通学の場合、授業料減免が年額535,800円、入学金減免が282,000円、給付型奨学金が年額459,600円支給されます。4年間の総支援額は約302万円となり、実質的に学費負担なしで大学に通うことができます。

私立大学・自宅通学の場合でも、授業料減免が年額700,000円、入学金減免が260,000円、給付型奨学金が年額459,600円支給されます。私立大学の平均的な学費(年額約90万円)であれば、年間約20万円の負担で済みます。4年間でも約80万円の負担ですので、十分に対応可能な範囲でしょう。

年収250万円の母子家庭の場合

年収250万円で扶養するお子さんが1人の母子家庭も、住民税非課税世帯に該当し、満額の支援を受けることができます。この年収レベルは母子家庭の中でも比較的一般的で、多くの方がこの支援を活用できると思われます。

支援内容は年収200万円の場合と同じで、国立大学であれば学費負担はほぼゼロ、私立大学でも年間20万円程度の負担で大学に通うことができます。この年収であれば、お子さんがアルバイトをすることで、教科書代やサークル活動費なども十分に賄えるでしょう。

【Q&A】母子家庭の大学無償化に関する疑問

Q. 大学無償化制度と大学独自の奨学金は併用できますか?

A. 多くの場合、大学無償化制度と大学独自の奨学金は併用可能です。ただし、大学によっては減額調整が入る場合があります。志望校の学生支援課で事前に確認することをおすすめします。

Q. 年収基準を少し超えてしまった場合、支援は全く受けられませんか?

A. 年収基準を超えても、380万円未満であれば3分の1、300万円未満であれば3分の2の支援が受けられます。満額ではありませんが、学費負担は大幅に軽減されます。

Q. 申請期限に間に合わなかった場合はどうなりますか?

A. 高校3年生の予約採用申請に間に合わなかった場合でも、大学入学後に「在学採用」で申請可能です。ただし、支援開始が遅れるため、できる限り予約採用での申請をおすすめします。

まとめ|条件を満たすなら早めに行動して大学進学を現実に

母子家庭でも、大学無償化制度を活用すれば、国公立大学だけでなく私立大学進学も十分に現実的な選択肢となります。重要なのは、年収・資産・学力の3つの条件を正しく理解し、早めに準備を始めることです。

  • まずは自分の世帯がどの年収区分に当てはまるかを確認する
  • 必要書類(課税証明書・住民票など)を早めに揃える
  • 高校3年生の春には「予約採用」の申請を完了させる
  • 他の奨学金や自治体の制度も並行して調べる

大学無償化制度は、正しい情報と行動力があれば確実に利用できる制度です。進学を諦める前に、この制度を最大限に活用して、将来の可能性を広げてください。

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